実験4・それぞれの道
レフリオンの成す力
3153年12月08日。ここ最近は世界を揺るがす事件ばかり起こっている。そのすべてが今私が作業していることに関係するものだ。エネルギー、医療、科学、軍その他色々な業界を変えてしまった禁断の物質、『レフリオン』。
私は今、そのレフリオンによって効果的に冷却し冷却時に発生する電気を回収する機構を作っていた。機械いじりが好きだった私にとっては、この作業は楽しかった。最新技術に触れることができた。作業中に何度かそんな物質、レフリオンを見た。少し、蒼く輝いていたその物質には不思議な力が込められているように感じるほどのどの物だった。
今日は、そんなレフリオンを冷却液タンクに入れる予定だ。本来の予定よりも工期が1週間ほど伸びてしまった。それは、隆一博士が発見した新事実にあった。
「レフリオンは元の状態に戻すことができる。化学変化していてもそれを変化前に復元できる。」
そう言うことだ。この新事実によって冷却も可能で、更に液に浸している場所を自動で修復できるのだ。そんな事実が出て、私はシステムを変更した元々は液体はタンクだけに溜める予定だったが、整備費を削減できる方法に改良した。
「理奈博士。発電所起動の準備が整いました。設備異常なし。いつでも作動させれます。」
そしてついに発電所が再始動する。生まれ変わった新しい設備で。私は軌道レバーを倒す。コアの部分が振動する。発電所が息を吹き返した。熱で赤く光っていた発電所は今では、青色巨星のように青白く輝いていた。コア内は、数十万度となっているだろう。しかし、レフリオンの効果によって熱さは感じなかった。パラメーターをチェックする。正常に動いていた。発電量をチェックするとこれまでの1.3倍になっていた。0.3はレフリオンから来ているのだ。レフリオンは、発電量を大きく変えた。そして、熱問題も解決させた。
私は、帰宅の準備をする。最近頭痛がする気がする。
「きっと疲れているんだ。ここ最近ずっと機械を休憩せずにいじっていたから。早く家に帰って休もう。いいことに明日は休みなんだ。」
そう言いながら物をまとめ、発電所を後にする。発電所の外に出ると、夜の空気が冷たく頬を撫でた。空には、巨大な人工衛星の光が幾筋も走っていた。地球の軌道を囲むエネルギー網『エネルギーリンク』だ。人類が作り上げた巨大な輪。今では空に土星のように輪がある。それを見上げるたび、少しだけ誇らしい気持ちになる。だが、今日はなぜかその光の輪郭がぼやけて見えた。
「……疲れてるな、本当に。」
自分の車に乗り込む。私はまだ一昔前の車に乗っていた。車の窓越しに、青白く輝く発電所が見える。まるで生きているように、鼓動しているようだった。
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