今宵は共に
趙琰は聞き上手な上に意外にも博識であった。最初は何を話せばよいか分からず戸惑っていた王飛だったが、すっかりと彼女に気を許して少しばかり饒舌になっていた。
「琰、あなたは先程から一体何に震えている?」
王飛は彼女が僅かに体を震わせていることに気がついて問いかける。すると趙琰は長い睫毛を伏せて言う。
「ずっと、ずっとずっとお会い致したかった王将軍とこうしてお会い出来たのです。体を震わせるなという方が無理にございましょう」
趙琰は顔を赤く染め、胸をおさえながら続ける。
「貴方様のことを思うと、体は火がついたように熱くなり、胸は激しい鼓動で苦しくなります。それでもわたくしは寝ても覚めても貴方様のことを考えずにはいられません。……まるでそれは恋心」
王飛の広い胸元に女は身を寄せ、潤んだ瞳に男をうつす。
「わたくしは貴方様にこの切なる思いをずっと届けたかった。そして今日、それが叶うことが嬉しいのでございます」
つまり趙琰は歓喜に打ち震えていたということだ。そんな健気で可愛らしい女の色香に、王飛はくらりと目眩を覚える。
「王将軍、今宵だけでいいのです。是非わたくしと共に過ごしてはもらえないでしょうか?」
王飛の手を取り、その人差し指を趙琰はぱくりと咥えて吸い上げる。
王飛は程徽の顔を思い出したが、その顔へ「すまぬ」と心の中で詫びて趙琰と宴会場を抜け出した。
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