第9話

ひなたの朝食を用意しラップをかけてテーブルに置いておく。

そして枕元には外出する旨を書いたメモを残し部屋を後にする。

昨日のうちにバリケード内にも罠を張り巡らせているため、全てを覚えられていない間は一人で出歩かないよう説明したから特に問題は無いだろう。

何かあれば連絡先も交換しているし、体内のメモリーチップを使った現在地を共有するアプリにもお互いを登録済みだ。



健康食を口にしながら点検ルートを辿って行く。

異常はなし。補強が必要な箇所もなし。今日も何事も無く終わり下の階のフロアに早い段階で進める、そう思っていたのだが・・・。



「何者かが侵入した跡がある・・・」

バリケードの端に明かりを剥ければ、マジックペンで書いた目印より僅かだがバリケードに使用している棚が内側に入っている。

昨日確認した時点ではきちんと目印より外側にあった。それに地震なども起きなかった。これはやはり侵入者がいると見ていいだろう。



周りを見てもバリケード以外に気になる点はない。感染者であれば自身や食らった生命体の体液などが付着している場合があるだろうし、目の前の紐に引っかかり罠で捕まえられているはず。

そうでないのであれば相手は生存者のはずだが、吉と出るか凶と出るか・・・。



ひなたに僕以外の人間が来ても開けないよう連絡を入れ、点検が済んでいない方向へと向かう。

徐々に壊されている罠が増え始めた為、こちらで間違いないだろう。

話が通じる相手であればいいのだがな。

そうでなければ追い出す必要があるが僕はひ弱な女子だからな、できるだろうか?

・・・大丈夫だ、このフロアに関しては僕の方が熟知している。罠をふんだんに使い捕らえるまで。

捕らえられたらこっちのものだ。飲まず食わずで放置し僕の言う事を聞くように仕向ければいい。

「僕ってば、天才だな?」

己の賢さが恐ろしい!!!

神は二物を与えずと言うがこんなに完璧な人間がいるじゃないか!



己の魅力について再実感した所で遠くから会話が聞こえ始める。

「────、──────!?」

「──、─────」

物音を立てず会話のする方へ近寄る。

聞くに若い男が二人のようだが・・・。

物陰に身を潜めながら恐る恐る声のする方を確認する。

「だぁ!?また罠かよ!なんだよここ!トラップハウスか何かかよ!!!!」

「バリケードもあったしやっぱりここで暮らしてる人間が居るのは確実だね」

「分析してねーで助けろ綾人!」

「・・・というか恭弥罠に引っかかりすぎ。もっと慎重に行動してよ」

視線の先には罠の中で暴れる口の悪い黒髪。そしてその男を呆れ顔で見つめる白髪。

なるほど?黒髪は阿呆なのだな。

男二人というのは些か面倒だなと思っていたが一人が捕らわれているのであれば話が早い。

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