第8話
居住地につき抱き上げたままでいたひなたを下ろす。
「先にご飯にしようかの」
そう口にすれば横からぐーっとお腹の音が聞こえ、くすりとこちらも笑みが溢れてしまう。
食事スペースとして利用している部屋に案内し、冷凍庫を漁りプレートタイプの冷凍食品を電子レンジで温める。
手軽かつ日持ちするものばかりを選んで持ってきていたがこればっかり子供に食べさせるわけにはいくまい。書店を見つけたら料理本を回収しよう。
屋上で家庭菜園をするのもいいかもしれない。
「温めたばかりで熱いからな。気をつけるんじゃぞ」
「うん!」
何度も息を吹きかけ冷まそうとする微笑ましい様子を見ながら食事に手をつけた。
「久しぶりにシャワー浴びれた・・・」
「ふふ、今日から毎日入れるぞ?」
今にも寝てしまいそうなひなたの頭を撫でながら一緒の布団に入りながら他愛も無い話に花を咲かせる。
これがガールズトークなるものかと少々、いや。結構楽しくなってる自分がいる。
なにせこうして会話すること自体久しいのだから。
一カ月?いいや、それ以上だろうか?
「ありがとう瑠璃ちゃん・・・」
最後に一粒の涙を溢しながら少女は眠りにつく。
「おやすみ。・・・いい夢を」
前髪を避けてその額に口付けをする。誰に教わったかも記憶にないおまじないだ。
悪夢を見ないように、確かそんな意味が込められていたと思う。
『───、──────愛しい子』
そんな風に言われながらの口付けだった気もしなくはないが霧がかかったかのようで上手く思い出せない。
また何か考え出そうとする思考を振り払いひなたの体を抱きしめる。
暖かい体温に浸食されていくようにこちらの瞼も次第に落ちていった。
目を覚ますと部屋の中は朝日で包まれていた。
時刻は7時過ぎ。
横で眠るひなたは起きる気配がない。こうしてゆっくり寝れるのも久しいのかもしれん。
そんな子を起こすのは不躾だろう。
できるだけ音を立てずに身支度を整える。
まずは日課であるバリケード内の点検だ。その後は、
昨日回収した館内のマップを広げ情報を整理する。これはひなたの父がメモと一緒に残して置いてくれたものである。
ご丁寧にひなたが隠れていた店には印があり最後まで娘の事を想っていたのが伝わる。
これで生活に必要な物は集めやすくなったがやはり機械管理室なるものに関する情報は手に入らず、か。
一般人が知る由もないのだからこれに関してはモールをひっくり返す覚悟でくまなく探索する他ないだろう。
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