第10話
「お主らか。時間を掛けて作った力作たちを壊してくれたのは」
包丁を向け男達の元へ足を進める。
武器がないと力づくで抑え込まれてしまうからな。
そうなってしまえば作戦も何も無い。
「あ"?」
「・・・君、ここの人?勝手に入って来た事は謝るよ」
白髪の男は手にしていた木刀を床に置き両手を上げる。
「おい!何武器置いてんだ!女の一人ぐらいどうにかなんだろ!」
「よく考えてよ、向こうは刃物持ってるんだよ?いくら長年剣道やってたって言っても勝てるだなんて慢心はしないよ。それにこの階感染者が一人も居なかったでしょ。この子、または味方に強い奴がいると見るべきだよ」
「・・・ッチ!」
「連れがごめんね。君は僕達と話すつもりがあると見てるんだけど合ってるかな?」
この白髪は話が分かる人間らしい。
未だにこちらを睨み続ける黒髪を無視し会話を試みる。
「ああ、お主らが敵対しないのであればこちらも危害を加える気はない。お前達は元々このモールに居たのか?他の生存者などについて知っている事はあるのか?」
機械管理室などについても知っているのであれば聞き出したいところではあるんだが。
「申し訳ないけど俺達は近くの大学からここに昨日来たばかりなんだよ。感染者が現れた日から生存者でまとまって生活してたんだけど、食料なんかも底が見え始めてきてね。このモールなら物資もあるだろうって俺達だけで出てきたの」
・・・なるほど。このモールの他にも大学や同じような建物にはまだ生存者がいる可能性は高いのか。
「モールにはどうやって入って来た?」
感染者が増えている様子も無いため出入口は封鎖されていると見ていたが何処か見落としているのか?であれば早急にその箇所を封鎖せねば。
「どこかを壊して入ろうかとも思ったけど、外から3階の窓の鍵付近が丁度割られているのが見えてね。そこからだよ」
「3階の・・・?」
ひなたの父親が居た部屋か。であれば感染者に侵入される心配は特に無いのだろうか。
にしてもこの男、大学を出る判断といい3階のあの窓を見つけた事といい観察力に優れているな。
男手は欲しいと思っていたがこのような人材も是非仲間にしたいところだ。
いわゆるパーティ勧誘というやつじゃな。
向けていた刃物を下ろし一歩、また一歩と傍に寄る。
白髪の男は物腰が柔らかそうに感じるものの、裏では何を考えているか分からん。
はっきり言ってすぐに噛み付こうとする横の黒髪よりこっちの方が厄介だ。
だが、それがいい。
僕は絶対イエスと言わせてみせるぞ。
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