【Lv.5】見聞

王宮書庫の禁書は、禁書だというのに、民間人にも閲覧が許されている。とはいえ、貸出や持出は禁止され、その場で読むことのみが許可されているのだが。曰く、人類はこの書物に記されている事象をよく理解し、深く戒めよと。文字を解することができるようになった紅き竜は、棚からひとつ禁書を取り出し、奇妙な図の隣に並べられた小さな文字たちを、指でなぞり始める。


『力のあるものが、力なきものを導くことは、それ自体はよくある話なのだ。そして、多くのものはそれを望む。我々が生きた時代、それは力こそが全ての時代であった。力あるもの、それは勇者と呼ばれた。魔王は、力を持ちながら、それに対を成す存在であった。我々は、戒めなければならない。必然を覆した二つの力が、その末に見たものは、決して幸福などではなかった。我々にとっても同じことだ。故に、均衡を保つ存在を求めた。では、我らは何を間違えたのか。言うまでもなく、我々の放った凶弾に他ならない。力など、手段のひとつに過ぎない。傍らに横たわる屍は、詞を紡がずとも、そこにあるだけでそれを物語っていた。その日、我々は一度目の滅びを迎えた。』




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