三つ目

否定の渦中に一つ、肯定が有るならば、その肯定は、

どんな色で、どんな形で、どんな大きさで、私はそれに、何を望むだろう。

纏わり附く否定の言葉に、翻弄され、飲み込まれ、一つ下の階層で、暗闇から溢れ出る言葉に恐怖し、ついに発せられた龍の如き水の流れに、またしても下へ下へと追いやられる。これが社会。

自分を取り巻く流れに目眩めきながらも見えた、太陽よりも明るく、月よりも美しい一点の光、眩しくて、何色か判別するために直視もできない、十月の空を油絵で描いたような紫色に染める太陽や、冬の白色はくしょくから見上げる味気ない空の、真っ黄色い真円となった月の光、それらよりも度を越して絶対的に価値を感じさせる、白色でも黒色でも、虹色でも透明でもない色の光。龍でさえ、瞳を緑色に変え、阿鼻叫喚の無間地獄への門を閉じる。

 ありえないだろう。存在するかも怪しい。妖の類かしらん。

神かしら。イエスかしら。若しくは仏かしら。徳がエッジワースカイパーベルトに到達する程高い、仏の後光かしら。

「汝は神なりや?」

光に問うた。目を合わせぬ無礼に御慈悲を。

返答はなかった。

神ならば知っている。私は考える生き物だ。

暗闇に、目を凝らす。漆黒の砂粒が満たされていた。

右手を砂に突っ込む。すると私は刺激から手を引き抜いた。

痛かった。生垣に素手を入れたよな、手を速く動かせば、皮膚を幹に持っていかれる刺激だった。今は、手の全体に血が出たと錯覚する程の痛みが広がっている。女爪の白い先端で砂を拾うと、今度は熱さにも冷たさにも感じられる痛みが、親指と人差し指をいじめた。そうして、思い出したように三言を呟く。

「神に祈っても何も無い。仏に祈っても何も無い。人に祈っても何も無い。」

神も仏もこの砂に埋もれている。若しかしたら砂粒の内の一つが神かも仏かも知れない。同じことだ。

神も仏も人も、今や黒くして「存在するしか仕方が無い」。

ならば、あの光は何であろうか。

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