二つ目

 中学生になった私は、その夢物語を、日毎に信じなくなっていった。

人間は特に頭が良いわけでもなく、ただ見えたものに、感じたものに、一喜一憂し、感情を強く表し、深く察することもなく、日常という名の超長編映画に、ああ、ここはこうだね、と、思っては忘れ、思っては忘れ、忘れては思うような、単純で短絡的な生き物だ、ということに気がついて、興が覚めたのだ。

そうして私は他人を信じることがなくなった。

科学者のように、ユーモアがあり、賢く、物事を論理的に捉え、論理的に理解するものが人間だと解釈して、いや、妄信していたものが、全て、凡て、総て、嘘だったことに、深くも浅くも絶望し、人間に対して失望したからだ。感情というものは、酷く面倒で、論理的思考に邪魔なものであり、人間の正しい判断を阻害する。

私は能く、他人から見たら奇行だ、と解釈できるような行動をとる。今、この手記を書いている状態も奇行だと言える。只今は通知表を返す時間なのだが、私は椅子の上に手帳を置き、しゃがんだ状態でこの手記を書いている。これを、人間が見れば、変人、と片が付くが、科学者なら、そうではないだろう。私は座るのが嫌だったから、しゃがんでいるのだ、しゃがんだ真後ろに椅子があったから、利用しているのだ。『人間』は、なぜそれがそのようなものなのか、ということに疑問を持たないし、持ったとしても答えを見つけられないものだから、その行動は変だ、と思うかもしれない。だから私は、中学生の『科学者』の友達が欲しい。『科学者』なら信じられるし、自分の事を変人だとも思わないから、私の理解者となれる人間が欲しい。

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