12.恋物語は終わらない

「そういえば100億年前にあなたが言っていた『好きな人』というのは、どんな方なのです?」


「人じゃないな」


「人じゃない……?」





「人じゃないとすれば、なんなのでしょう」


「ハエトリグモ」


「そこにいる蜘蛛さん、まさか本当に恋のライバルだった……?」





「100億年も待ったのに、虫ごときに負けるなんて理不尽すぎるのですわ……」


「もう100億年待ってみたらどうだ?」


「ここからさらに100億年間も待たされるなんて理不尽すぎるのですわ……」





「こうなったら冗談ではなく本当にハエトリグモに転生するしかない……!?」


「待ってるよ」


「待つのではなくめて欲しいのですが?」





「でも転生なんてできないだろ」


「100億年も生きてきたわたくしたちに不可能の三文字はないですわ」


「100億年も生きてきた俺たちにあるのは不可解の三文字だけだからな」





「転生したら巨乳になれるといいな」


「ハエトリグモになってしまったら披露する機会がないのですわ?」





「ハエトリグモになってから巨乳の人間にければいいんじゃないか?」


わたくしは一体何を求められている……?」





「だったら! 最初から人間のわたくしを好きになれば良いのですわ!」


「巨乳が抜けてる」


「しまった!」





「胸の大きさなんて関係ない、俺はお前という存在が好きだから──という台詞セリフを嘘でもいいから言って欲しいのですわ」


「嘘でいいのか?」


「ダメですわ」





「転生なんてする必要はない、俺はこの宇宙が終わるまでお前と一緒にいることができればそれで幸せなんだ──という台詞セリフを嘘でもいいから言ってくれても構わないのですわ」


「だから嘘でいいのか?」


「だからダメなのですわ」





「100億年も待つ必要はない。だってその時間もお前と一緒に過ごしたいから」


「急にどうしたのです?」


「100億年前に告白されたとき、俺がこう言っていたらどうしていた?」


「実際そんな台詞セリフを言われたら、クサすぎて……笑う」





「ところでそろそろ多少なりとも愛が芽生える頃ですわよね?」


「うーん、あと100億年あれば芽生えるかも」


「やはりわたくしは100億年待たされる運命にある……?」





「そんなに待てませんわ! というわけでハエトリグモに転生いたします。またお会いできる日を楽しみにしておりますわ」


「俺は巨乳エルフちゃんと仲良くなれそうな世界に転生するかなぁ」


「あのですね……『行かないでくれ』とめて欲しいのであって転生先について語り合いたいわけではなくて……というか虫になったわたくしを残して別の世界線に行くとか放置プレイが過ぎますわ?」

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