第3話

「やあ、君。すごいじゃないか」


あら、紳士的な男性が近づいてきたわ。

落ち着いていて、ハンサム。

声が低くて、シブいわ。


おや、この人なんか見たことある。

もしかして。


「僕はこういう者だよ」


名刺を出された。

あーっ!


「どこかで見たことがあると思ったら、あなたは、シブシブ俳優の、渋川栗男さんじゃない!」

「やあ、知っていてくれたかい?」

「私、あなたの大ファンなのよ。サインちょーだい!」


きゃーっ。

芸能人に会っちゃった。

さすが渋谷だわ。


「アハハ。サインならいくらでも書いてあげるよ。それより君、いい特技を持っているね。芸能界に興味ないかい?」

「芸能界?興味あるあるーっ」

「僕の事務所の社長に会わせてあげるよ」

「えーっ。私、芸能人になれるの!?」

「うん、なれるよ。ムフフ……」


わーっ。

私、生きてて良かったーっ。




私たちは、栗男さんの車で芸能事務所に行ったの。


運転手付きの、ピカピカの外車よ。


「すごーい。この車、テレビに冷蔵庫まで付いてる!」

「ジュース飲むかい?お菓子もあるよ」


事務所に着いたら、変な社長みたいな人が出てきた。

少しトランポリンの技を披露したら、すぐにデビューが決まったわ。


「渋川君、でかしたぞ。よくぞこんなスターの原石を見つけてきてくれた」

「いえいえ」

「君、天才トランポリン少女。君ならスター間違いなしだ」

「きゃー、スターだなんて!」


私、変に興奮しちゃって、何度も飛び上がっちゃった。

ピョーン、ピョーン。

それっ、一回転!


「し、白だ……」

鼻血ブー。


「いやーん、うっかりした!」



◇◇◇



「お次は、天才トランポリン少女の登場です!」

「ワー!」

「ワー!」


すごい観衆。

眩いスポットライト。

煌びやかなドレス姿の私が、ステージに上がるわ。


ピョーン、ピョーン。


「わあ、すごいや!」


ピョーン、ピョーン。


「ブラボー!」


ピョーン、ピョーン。


「こんなの見たことない!」


ウフフ。

みんな度肝を抜かれちゃって。

それっ、一回転!

やあっ、二回転!

どうだ、三回転!


「し、白だ……」

鼻血ブー。


「いまだかつて、こんな天才少女がいたでしょうか!?前代未聞です!天地開闢以来の神童です!我々は今、神の奇跡を目撃しているのです!」

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