第6話

サクマは、先程の黒い刃を見て、確信した。

これは、刃物ではない、と。

そしてこれが、謎の弾丸の正体の一部である、と。


サクマは、ツトムに電話を入れる。

謎の兵器の正体。サクマはそれに気付いた。早くツトムに知らせねば。

何度か電話を掛け直し、やっとツトムは電話に出た。

『どうした? 今、ちょっと忙しいんだ。』

「ん? 何かあったのか?」

『ああ。隊のレーダーに、正体不明の航空機サイズの飛行物体が数体、確認されてな。しばらくレーダーで追尾をしていたんだが、突然反応が消えてしまったんだ。』

「おかしな話しだな。」

『ああ。だから今、基地内のピリピリは最高値だよ。で、お前の用事は、なんだ?。』

「あ、ああ。例の弾丸の正体が、解った。」



ツトムとサクマは、急ぎ基地近くの空き地で落ち合った。

「弾丸の正体が解ったってのは、本当か?」

ツトムはサクマを問いただす。

「ああ。だが、ここは危険だ。どこか屋内に移りたいのだが…」

その瞬間。

黒い光が空に瞬いた。

「危ない!」

サクマは、ツトムを突き飛ばしながら、地面に伏せる。

サクマとツトムの間を、風が通り抜けた。

いや。身を切るほどの陣風が突き抜けた。

「な、なんだ、今のは!」

ツトムが声を上げる。

「いいから、走れ!」

その声で、二人は基地に向けて走り出す。

「なるべく身を隠しながら進むんだ!」

サクマの指示に従い、二人は木々に身を隠しながら、走る。

ザクン!

二人の真横にあった木に、20cm程の巨大な穴が空いた。

…あれに貫かれれば、人体などひとたまりもない。

ツトムの背筋に冷たい汗が流れる。

必死で走る二人は、なんとか基地内の屋内駐車場に辿り着いた。

「…なんなんだ、あれは!」

ツトムは声を荒れさせながらサクマに問い詰める。

サクマは、懐からハンカチに包まれた、例の黒く小さい刃物を取り出す。

「これが、例の弾丸…黒いナニカの正体だ。」

ツトムの表情が変わる。

「こ、こんな小さい刃物が、あんな威力を持つ弾丸になるのか? 馬鹿な!」

「正確には、これは、あの黒いナニカの『一部』だ。」

「え?」

「あの黒いナニカは、この刃物で覆われた…生物だ。」

「…あれが、生物?」

「ああ。これは、その生物の…羽だ。」

「は、羽? この…黒い刃物が?」

「そう。あれは…。鳥なんだ。」

「と、鳥? おい、馬鹿を言うんじゃない。たかが鳥に、あんな真似事ができるあるわけないだろ!?」

「人に知覚出来ない程の高速を出せる鳥は、幾らでも存在している。」

「…え?」

「そして、この羽の持ち主となる生物の名前は…。」

「…。」

「学名Hirundapus caudacutus

英名White-throated needle-tailed swift

動物界脊索動物門鳥綱swifts目swifts科…

和名…『雨燕』だ。」

「アマ…ツバメ…だと…。ば、馬鹿な!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る