第30話 クズギャルに弄ばれるカイザー
――――【颯真目線】
石動が突然執行部長室を訪れ、頭を床にこすりつていた。
「カイザー、申し訳ありません! 迷宮部の探索を阻止することができませんでした!」
「馬鹿野郎!! 何の成果も得られませんでした、みたいに言ってんじゃねえぞ、この穀潰しがっ」
オレは怒りのあまり石動の頭を踏みつけ、叱責する。
「うぐぐぐぅぅ……」
「てめえはオレに受けた恩を仇で返そうってのか? ああ?」
「決して、そんなつもりは……あぐぅぅ」
「オレは迷宮部を潰せっつっただろ、できてねえってことはてめえはゴミ以下の存在なんだよ」
「ま、まさかカイザーのお仲間が迷宮部に加わるなど思ってもみなかったんです!」
「ああ? 何言ってんだ、てめえ?」
オレの仲間? 哪吒のことか?
義手がついたくらいで騒ぐほどのことじゃねえよ。元々あいつはアリシアたちが懐いてるからパーティーに入れてやったに過ぎないんだからなぁ。
石動がビビり過ぎてることに苛立ちを覚えたときだった。ドアがノックされ、執行部役員の男子が血相を変えて入ってきた。
「颯真さん! 大変です!」
「うるせえ! 今取り込み中……」
男子は直ぐに駆け寄りオレに耳打ちした。
「はあっ!? パーティーから離脱してアリシアが転校しただと!?」
オレは男子に命令して、すぐに協会のHPにアクセスして、会員登録情報を照会させた。
―――――――――――――――――――――――
会員番号106985
氏名 御門アリシア(16)
所属 黄昏学園 迷宮部
―――――――――――――――――――――――
オレの顔を見た男子は「ひっ!?」と声を上げた。
「おい、石動」
「は、はい……」
「てめえ無駄話ばっかしやがって、肝心なことを隠してやがったな?」
「決してそんなつもりは!?」
「アリシアがオレの下を去ったのはぜんぶてめえの責任だ」
「は?」
「『は?』じゃねえよ、もうてめえに女は紹介しねえし、てめえはここに来る資格はねえから。ついでに慰謝料500万持って来い」
「そんなっ! 私はカイザーのために尽くしてきたんですよ! それに慰謝料って何ですか!?」
「ああ? んなもん無能な手下に手を焼かされたからに決まってんだろ」
「何でもしますから、それだけは勘弁してください!!」
「ほう、何でもするっつったな? じゃあ、てめえの不始末はてめえで拭えよ。ダンジョン行って、あいつら潰して来い」
「えっ!? 私は探索者ライセンスは持ち合わせておりませんが……」
「んなもん、なくても入れんだよ。オレのコネクションを舐めんな」
「ですが……無許可で行くのは……」
「できんだろ? それとも何か? てめえは糞したら尻は拭かねえのか? そういうことなんだよ、ボケが!」
オレはわざわざしゃがんで、四つん這いになっている石動の肩に手を置いた。
「大丈夫だ。ダンジョンで事故を装ってやりゃ大した罪にはなんねえよ。お膳立てはオレがやってやる。あいつらが課題を達成して油断してるところを狙ってやれ。すべてを失うか、女とヤリまくって幸せな生活に戻るか、てめえの頭でよく考えてみな」
「は、ひぃ……」
石動はぶるぶると震えてやがった。怪我させんのは大丈夫でも人をやんのはハードルが高えか。
やっぱちげえよな、ダンジョン探索者は!
ダンジョン探索するような人間みてえに覚悟ガンギマリとは行かねえ一般人どもには辟易しか覚えねえ。
何か石動がサクッと哪吒たちをやる良い方法がねえかと考えてるとこだった。
ノックもなしにドアが開いて、人が入ってこようとしている。
「うぜえな! 今取り込み……瑠衣!?」
「クスッ、お兄さまは大変ですね。使えない奴隷ばかり抱えて」
「瑠衣!?」
瑠衣は俺の
金髪ウルフカットのロングヘア。ブラウスの襟はこれでもかと開け放って、谷間と豹柄のブラをこれでもかと見せてくる。尻の青い中坊だったころからクソエロいボディしてやがった。
分からせてやろうか、と何度思ったことか……。
だがこいつだけはオレのセンサーがヤバいと警告してくる。こいつにハメたら確実に破滅すると。
オレすらヤバいと思う瑠衣が石動の背中に座る。
「る、瑠衣さま!?」
「奴隷くん、私に座ってもらってうれしいでしょ? キミ、ドMだもんね、アハッ」
「は、はい、瑠衣さまっ」
「奴隷くんは瑠衣のお願い聞いてくれるよね?」
「さ、流石に瑠衣さまでもそれは……」
「瑠衣の嫌いな子、やってくれたらお礼に奴隷くんとえっちするってどう?」
「やらせていただきます!!!」
「アハッ! 奴隷くん、性欲強過ぎてキモい」
「おい、石動! てめえ、オレの奴隷だろ。どっちが主人か間違えてんじゃねえぞ」
まあ、瑠衣のお陰で石動がやる気になったんだ。オレは手を汚さずに哪吒を追い落とし、アリシアを奪い返して、シノブを寝取ることができる。
石動が準備があると言い、オレたちに敬礼したあと去っていった。
執行部長室はオレと瑠衣だけになる。
デスクに腰掛けた瑠衣は艶めかしい太股をこれでもか見せつけ挑発してきた。椅子に座るオレの顎を撫でながら……。
「婚約者からも逃げられちゃったかわいそうなお兄さまぁぁ、フフッ」
「馬鹿にしてんのか!」
「いいえ~、私がアリシアさんの代わりにお兄さまを助けてあげようって言ってるんじゃないですか。お姉さまからたくさん借金されてるんでしょう? 早く返さないと利息が溜まってお姉さまに頭が上がらなくなっちゃいますよ」
くそっ!
姉貴の奴、ベラベラと余計なことを……。
瑠衣は姉貴に匹敵するくらいのルックスだけは良いが中身はとんでもねえクズ女だ。
石動だけに任せておけるはずもなく、オレは急遽美里とれもんを招集する。
「美里、れもん! 分かってんだろうな? 今度オレを見捨てるようなことがあったら、哪吒みてえに迷宮探索校から追放してやるからな。覚悟しとけ」
「はあ? おまえ日向と仲直りするって聞いたから来てやったのに何言ってんだ?」
「そうまんは頭がおかしい」
「ふざけんじゃねえぞ! 何でオレが哪吒と仲直りなんてしなきゃなんねえんだよ! あいつがオレに詫び入れんのが筋ってもんだろ」
「そりゃこんな奴とパーティー組まされたら、アリシアだって出て行きたくなるだろ」
「そうまんはぜんぶ自分が悪いって気づいてないんだ」
「うるせえ! れもん、てめえは女子寮から追い出されたら住む場所がねえって分かってんのか? てめえの毒親と暮らしたくなかったらオレに従え」
「ひんっ」
「颯真……おまえマジサイテーだな」
美里はパーティーのリーダーであるオレを蔑ろにして、吐き捨てるように言い放った。
「はあ、やってらんね。帰るぞ、れもん。寮追い出されたらあたしん部屋をシェアしてやんよ」
「うん! 美里っち、今日ゲーム配信なの。手伝って!」
「たくっ、仕方ねえな。やってやんよ」
れもんの背中に手当て、二人は踵を返したときだ。気配を遮断していた瑠衣が二人の退路を塞ぐ。
「あらぁ、美里先輩、お久しぶりです」
「なっ!? 瑠衣! なんで一年のおまえがここに!?」
「お兄さまに特別に補充メンバーとしてパーティーに入れてもらいました。また昔みたいに仲良くやりましょうよ、セーンパイ」
美里の奴が今にまで見たことねえくらい引きつってやがった。
その瞬間、瑠衣は細いベルトを鞭のように使い、美里の首を打つ。パチンと渇いた音が鳴ると美里の首にはチョーカーが巻かれていた。
れもんの注意が美里の首に注がれる。それを良いことに瑠衣はれもんの首にもチョーカーをはめてしまう。
「何しやがった!?」
「な、なにこれぇぇ?」
「私が猛毒スキル持ちであることは知ってますよね? 私に逆らえばあなた方二人にはそのチョーカーから即死クラスの神経毒が注がれるんですよ、死にたくなかったら私の指示に従ってくださいね。そうじゃないと愛しの哪吒先輩に会えなくなっちゃいますからね」
何にせよ、瑠衣の方が石動みたいな他のボンクラどもと違って使えそうだな。
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