第10話 NTRを始めるクズリーダー

――――【颯真そうま目線】


 アリシアが気を失った、ってオレの取り巻きから報告があったから放課後に保健室の前まで来てやったが……。


 ドアの前には美里とれもんが要人警護のSPセキュリティポリスみてえに構えてやがる。


 腕組みして立つ美里はオレを一歩たりとも前に進ませねえといった感じで、オレを睨んだ。


『アリシアに構ってもらえねえからって、寝込みを襲うとか変態か?』

『美里、てめえにオレたちのことの何が分かんだよ! オレはアリシアの婚約者だぞ』


 オレが美里に凄むがまったく動じることがねえ。


『そーまんはありりんに嫌われてる。それくらいれもんでも分かるもん』


 なっ!?


『黙ってろ! この舌足らずが!』

『ひんっ!』


 れもんはすばしっこい動作で美里の陰に隠れていた。


 

『くそったれが!』


 苛立たしさから購買部の自販機の空き缶入れを思い切り蹴ると蓋が開いて空き缶が床に散らばった。周りにいた生徒たちの視線が集まるがオレの顔を見た途端目を背けて何事もなかったかのように散っていく。


 どいつもこいつも哪吒なたく、哪吒、哪吒!


 マジでムカつく。


 アリシアも、美里も、れもんも!


 オレは泣く子も黙る網代家のご令息だぞ!


 それなのに……。


 まずはアリシアだ!


 あいつはオレの婚約者なのに『許婚だから仕方なく、あなたのパーティーに加わります。ですが婚姻前に変な気は起こさないでください』なんて抜かしやがった。最近なんてオレがアリシアに近づくとに 決まって哪吒のところに行きやがる。


 いつもオレを汚物でも見るかのような蔑んだ目で見てきやがるのに、哪吒と話すときだけは微笑むとか性格悪過ぎだろ!


 ああっ! 結婚するまでは勝手しろ、とか余計なことを言うじゃなかった。


 次に美里だ!


『ああ? ヤリモクで誘うんじゃねえよ。あたしは日向とパーティーを組むんだよ、颯真と組んだ覚えはねえ!』


 一軍ギャルのヤリマンファッションしてやがるくせに閉じたハマグリみてえなガチガチの貞操観念とかおかしいだろ!


 くそったれ! 今すぐにでもてめえのアワビにオレの太刀魚をぶち込んでやっぞ!


 最後にれもん……。


『れもんはなたくんに恩返ししたいから入るだけだから。そーまんはおまけ』


 ロリっぽい見た目で簡単に言いくるめられそうなのに、オレにはメスガキムーヴをかましてきやがる!


 なんだよ! そーまんって!


 オレはそーめんじゃねえぞ、ゴラァ!!!


 どいつもこいつも、オレの趣味の女でパーティーを固めたら、ムカつく行動ばっかしやがる!


 おかしいだろ!


 そこは『颯真さま、ご奉仕致しますね!』なんだよ!


 学内の女どもはみんな、オレに惚れてる。なのにおまえら三人だけはオレのことを毛嫌いしやがる。


 ハイソでセレブでイケてるオレより哪吒みてえな貧乏人がいいとか、頭に虫でも湧いてるんじゃねえの?


 いくら哪吒や三人のことを嘲笑おうとオレの気は晴れなかった。



 ああ、何か気晴らしになるようなことでもねえかな?


 そう思って教室に戻ったら、一人ぽつんと哪吒の席にゆきが座ってやがった。


 だったらいいよ。


 オレはあの哪吒の地味な女を奪ってやる。


 それが一番あいつにダメージを与えられる。


 オレは寂しそうにしてるゆきに声を掛けた。


『ゆきじゃん! 何してんだよ』

『颯真くん……』

『浮かない顔してんな。オレで良かったら話してみねえ?』

『え? いいんですか?』


 はははは! チョロ過ぎ!


 やっぱ寂しそうにしてる女に優しい声掛けたら、ぐいぐい食いついてきやがんの。


『ゆき、場所移して話さねえか?』

『う、うん……』


 流石に警戒されっか。だがそれも承知の上だ。



『わあっ、網代くん! 凄いよ、迷宮探索校が見える!』


 ゆきが眼下に広がるダン校を指差して、はしゃいでいる。


『私の家はどこだろ? あれ……かな?』


 そりゃそうか、コーヒー一杯で千五百円も取る高級カフェの展望テラスの眺めを見たらゆき程度の庶民が感動してもおかしくねえ。


 ゆき……普通はおまえ程度の地味な女を連れてきてやる義理はねえが、哪吒の彼女ってことで特別だ。


 オレはゆきと肩を並べ、訊ねる。


『言ってみろよ、何があったのかをよ』

『うん……』


 見晴らしの良い景色を見た効果か警戒感の薄れたゆきはオレに本音を話し始めた。


『あー、そうだな。哪吒ってそういうところ、鈍感だよな。分かるよ、分かる』

『ありがと、網代くん……』


 分かんねえよ、おまえら下流国民の気持ちなんてよぉ! まあオレは心が広い。下流国民の話を聴いてやるのもカイザーの勤めだからなぁ。


『おい、ゆき。他人行儀だろ。オレとおまえはもうパーティーメンバーなんだぜ? せっかくなんだし名前で呼び合おうぜ』

『で、でも他のみんなに悪いから……』


 視線を反らしたゆきだったが、オレは透かさずゆきの肩に手をやる。


『ああ? 気にすんなって。オレが良いって言ってんだ。文句言う奴がいたらオレが黙らせてやるから』

『で、でも……』

『その方がパーティーの結束力が強まるんだって』


『あ、うん……颯真くんは優しいね』


 オレの手を嫌がることなく、受け入れた。


 オレはそんじょそこらの馬鹿どもと違って無理やり奪ったりはしねえ。オレに惚れさせ、あくまで女の意思で男を捨てさせるまで落とすのが信条。


 女が男の前で『ごめんなさい、好きな人ができたの。あなたとはもう付き合えない』って宣言させたときの充足感は女に中出ししてやったときより上かもしんねえ。


 男の格の違いをまざまざ彼氏の前で見せつけてやったときの悔しがる表情たらマジ最高だわ。


 哪吒、おまえが悪いんだからな。


 おまえさえ、このダンジョン探索校のカイザーであるオレの壮大な計画……ダンジョンセックスのメンバーシップ限定のプレミアムライブ配信に協力してりゃこんなことにはならなかったんだよ。


 哪吒よぉ。


 とりあえずおまえの地味カノはオレ好みの女に改造してやるから楽しみにしてろ。

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