止水に浮く水藻
酒麹マシン
所詮水藻
大学に落ちた。
孤独な人生が始まった。
いや、こんなことになるずっと前から、私は1人だったのかもしれない。
人間は結局、1人で生きている。そのことの自覚の濃さが違うだけ。
友達がそばにいたとき、心は明るく騒がしく、遮るものは何もなく、影も光も受け入れていた。
よく澄んだ川の水のような私。
あの時は気が付かなかったけど、見るもの全てが美しく透き通っていた。
でも今は、流れから逸れたような感覚。
水は止まり、蚊が卵を産みつけるように、私は自分が穢れていると錯覚してしまう。
みんな水なのに、私は流れられず、ゴミばかりが溜まっていく。
私は時が止まった水だ。
結局、私は何になりたいんだろう。
努力はしているのに、時間を無駄にしているような気がする。
残っているのは、燃えかすのような何かにしがみつく自分の垢だけ。
その現実から目を逸らすために、推しに依存する。
なんだか、色々と疲れてしまった。
私はオタクだ。でも、それにすら疲れてしまった。
何かに依存することでしか楽しみを見つけられない自分に、心が擦り減っていくように感じる。
好きになると、どこまでも追ってしまう。肩の力を抜くことがどうしてもできない。
しがみつくのをやめたい。
もっと楽に水の中を泳いでいたい。
でも、ただ流されるのは嫌。
ちょっとでも抵抗を感じたいし、加速したい時はのびのびと両手足を伸ばして…
推しは嫌いじゃない。だけど、私を救えるのはきっと私だけだと思う。
もっと、日々の煌めきを感じたい。
風が心地よく肌の上を、私の心をそっと包むように転がっていくのを感じたい。
心を、ちゃんと感じたい。
ちっぽけなことで揺れて、あたたかくなっていく心を。
肌触りを、匂いを、静寂を、光を。
そして、そのすべてを、もう一度、自分の手のひらで抱きしめたい。
このぬめついた汚水の上から、冷たく爽やかな水に行くことを
諦めない。
止水に浮く水藻 酒麹マシン @aiaim25
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