第8章 メツボウはつくれる! その2

ピンポーン


インターホンが鳴ったので玄関へ行き、ドアを開ける。


「NMKからきました。」


目津房さんだった。


「私に話の続きを聞かせてください!日本は滅亡しますよねっ?!」


いつもと違う目津房さんの台詞に吹き出してしまいそうだった。


今日は、予言についての私のアイデアを伝えることとなっていた。


「目津房さん…、聞いてください。」


「はい!なんでしょう?」


「「メツボウはつくれる!」って思わない?!」


「はい?」


「だから、作るんだよ!私たちで!!」


「え?だから何を?」


「予言だよ!め・つ・ぼ・う予言!!」


「え?予言って作れるんですか?!」


目津房さんは目をキラキラさせて言った。


いや、まぁ作るんだけどさ…

これから作るのは“捏造された”予言なわけで、嘘なんだよ?

まぁ、楽しそうだからいっか!


「まず、予言のジャンルを決めようと思うんだけど…」


「ジャンルですか!メジャー系を取り上げましょう!」


「うーん。メジャー系ってメジャーなだけあって、詳しい人がいっぱいいると思うんだ…。」


「詳しい人がいっぱいいたらダメなんですか?」


「ツッコミどころがあったら、やり玉に上げられるんじゃないかな?それは避けたい。」


「そうですね。反論されたら予言の信ぴょう性に傷がつきますもんね!」


いや、捏造予言なんだから信ぴょう性もクソもないと思うけど…

そう思ったけど、口には出さないでおいた。


「だから、インディーズ系のニューカマーで行こうと思う!」


「インディーズ系のニューカマーですか?題材にする予言のネタはあるんですか?」


「ないよ!だから、私たちで作るんだ!」


「はい?」


「私たちででっち…作り上げれば、詳しい人は全くいないわけじゃん?」


「だからツッコミようがないと思うんだよ!」


「なるほど!」


「では、どんな人に予言をさせましょうか?」


「“巫女さん”って予言者にされがちじゃん?」


「それは、一般的なイメージとして「予言してそう…」っていうのが強い職業だからだと思うんだよ。」


「予言してそうな職業…ですか?」


「そう。他には神主さんやお坊さん、霊能者やイタコさん…、修験者なんかも良いかもね!」


「あと、占い師さんとかはどうですか?」


「それだ!占い師なら“予言が商売”みたいなところがあるもんね!」


「では、予言者の職業は占い師ってことでいきましょう!!」


そんな感じで目津房さんと、これから“作成”する予言について色々なことを詰めたところ、こんな感じになった。


・どんな予言者?

 (修験道で有名らしい)山形県の過疎化が激しい地域に住んでいる。

 年齢は70歳くらいの老婆。

 近所では“知る人ぞ知る”という感じの有名な占い師。

 限られた人しか占わないが、たまにクチコミを聞いた人が遠方からやってくるらしい。

 弟子が一人いて、その弟子が2025年9月頃に、これまでの予言と的中させた事例をSNSへ投稿したところ、ネット上で話題となった。

・これまでに的中させた予言

 2019及び2020年、劇場版『鬼滅の刃』が大ヒット。

 2021年の東京オリンピック・パラリンピック成功開催。

 2025年、大阪・関西万博の大成功。

 2025年、大阪大学の坂口志文氏がノーベル生理学・医学賞を受賞。

・これから起こることの予言

 2025年12月21日(冬至)に日本人全員が“意識の大変革”を起こす。

 もし、この“意識の大変革”が失敗すれば日本は滅亡する。

・予言を語るまでのエピソード

 通常とは違う天候に違和感を抱き、夜空を見上げていたところ、突然プレアデス星団からのメッセージを受取る。

・予言の解説

 「SNSで話題」という偽情報

 天文学的な“本当の”情報

 数秘術のこじつけ

 量子力学との関連性

 微妙に今の社会情勢に沿った事柄

 以上を盛り込む。 

・まとめ

 「2025年12月22日、あなたの意識は大変革に至ることができるのか?」的なことを 言って締める。


「ざっとこんな感じかな?」


「そうですね、イイ感じです!」


「ところで、予言を作ってどうするんですか?」


「動画を作って、動画投稿サイトに投稿してみようと思ってるんだけど…」


「動画ですね!良いと思います!」


「では、私がナレーションの台詞を考えますので、その他の動画作成についてはお任せしてよろしいですか?」


「おっけー!まかせてよっ!」


「じゃぁ、私、これから家に帰って台詞を考えてきますね!」


「また明日きます!!」


そう言うと目津房さんはスキップしながら帰って行った。

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