第7章 東北の「沈黙の巫女」の予言 その6

ピンポーン


インターホンが鳴ったので玄関へ行き、ドアを開ける。


「NMKからきました。」


目津房さんだった。


予言に含まれる誤情報の確認のために、AIアプリを起動させたノートPCと一緒に

玄関まで赴いた。


「私の話の続きを聞いてください!日本は滅亡しますっ!!」


今日は、東北の「沈黙の巫女」さん改め巫女さんの“生涯最後の予言”を教えてもらう予定だった。


「巫女さんの最後の予言…それは2024年の12月、まさに彼女が逝去される直前に

されたとされています。」


「巫女さんは村人たちを集めて、最後の力を振り絞ったかすかな息遣いでこう語ったとされています…」


「11月30日午後3時、心臓が永遠に止まるか、再び脈打つか。それは汝らの選択

なり。三つの兆しが残響を残す中、静寂が全てを飲み込み、新生の息が吹き込む。

破壊の果てに、光の門が開く。」


「破壊の果てに」か…。

きっと目津房さんは、このへんの解説で“滅亡”を盛り込んでくるに違いない…。


「“心臓”は、日本の政治や経済だけじゃなく精神を含めた上での革新を、“永遠に

止まる”は不可逆的な崩壊を…国民の分断による確執が引き起こす悲劇や大災害の

ことですかね、「汝らの選択」は崩壊の回避可能性を表しているとされています。」


「前の「エリオ・ブレスレン」の予言にもあった“心の統一”みたいなラブアンド

ピースなことを成し遂げないと、日本は滅亡しちゃうってこと?」


「そういう解釈で良いと思います!」


うーん。

巫女さんの“最後の予言”って聞いていたからちょっと期待していたんだけど、前回の予言と言ってることが似通っているんだよな…。


「「破壊の果てに、光の門が開く」ってところが気になるんだけど…」


とりあえず目津房さんから“滅亡”を引き出すために、このように言ってみた。


「もちろん、「破壊の果てに」日本は滅亡するんです!」


目論みどおりであった。


「いや、でも日本人がラブアンドピースになれば滅亡は回避できるんじゃないの?」


「考えてもみてくださいよ!今の日本を!」


「頑張っている人たちの足を引っ張ることが“平等”や“公平”だと思っている大二病を患った人たちや…、」


大二病…?

中二病の亜種か?


「“教養の無さと自己承認欲求から生まれる悪”をネットに振りまくる人たちや、

そういう人たちに対して“正論という正義の名を語った暴力”を振りかざす人たち、」


「“与えられること”を“権利”と勘違いして、不平不満を垂れ流しながら自分からは何も行おうとしない人たち…、」


「“年功序列”という時代錯誤も甚だしい制度のおかげで出世できただけなのに、これまた時代錯誤も甚だしい“儒教的価値観”を振り回して有能な人たちを潰す無能な人

たち!」


「そんな人たちが蔓延る今の日本で、ラブアンドピースな社会を実現できると思い

ますかっ?!!」


目津房さん…

相当今の社会に対して不満があるんだな…。

鬼気迫る勢いに圧倒されて言い返すことができなかった。


「しかも期限はあとわずかしかないんですよっ!」


「ぜぇーったい、日本は選択を誤るに決まってます!!」


「滅亡するんです!め・つ・ぼ・う!!!」


「お、おう…。」


ドンッ

目津房さんにドアを無理矢理閉められた。

私はドアを開けて見ると、目津房さんは「ぷんすか」という体で帰っているところ

だった。


いや、今回はそんなにツッコミいれてないやーん!

せっかく“偽情報”を見抜いてツッコミをいれるために、ノートPCを玄関まで持ってきてたのに。

なんでそんなに怒ってるのさ、目津房さん…。

NMK…日本滅亡協会で何か嫌なことでもあったのかな?

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