第7章 東北の「沈黙の巫女」の予言 その5
ピンポーン
インターホンが鳴ったので玄関へ行き、ドアを開ける。
「NMKからきました。」
目津房さんだった。
予言に含まれる誤情報の確認のために、AIアプリを起動させたノートPCと一緒に
玄関まで赴いた。
「私の話の続きを聞いてください!日本は滅亡しますっ!!」
今日は、東北の「沈黙の巫女」さん改め巫女さんの予言のうち、2025年に関する
ものの続きを聞かせてもらうことになっていた。
「昨日の予言の次に発せられた予言は、2024年11月頃にされたと言います。」
「巫女さんは村の古い祠で瞑想中に、村人たちを集めてこう語ったとされます…」
「三つの兆しが揃う時、日本の心臓が止まる。北から吹く冷たい風が肌を刺し、三つの星が空に異を唱え、水が逆さに流れ出す。静かなる崩壊が訪れ、新たな鼓動が生まれる。それは破壊ではなく、目覚めの始まりなり。」
「三つの兆しってなんだろう?」
「“北から吹く冷たい風”、“三つの星の異常な配置”、“水が逆流する現象”の三つの
ことだとされています。」
「また、“日本の心臓”は日本経済や社会の中心、つまり東京を、「停止」は一時的な混乱を、「新たな鼓動」は再生を表していると言います。」
なんか…、予言の言葉はそれっぽいんだけど内容がなぁ…
要は“政治や経済が荒れるけど首相交代とかで落ち着く”みたいな内容でしょ?
そんなの日本じゃ日常茶飯事じゃん…。
「実際に三つの兆しって発生したの?」
予言について私が疑わしく思ってるのがバレないように、目津房さんに質問して
みた。
「まず、“北から吹く冷たい風”についてなんですが…」
「8月27日に寒冷前線が本州付近を通過したため、記録的な猛暑にもかかわらず、東北地方では朝と晩に著しい気温低下を記録したとそうです。」
「次の“三つの星の異常な配置”は…」
「8月中旬に、水星、金星、火星、木星、土星、天王星の6惑星が夜空に直線的に
並ぶという大変珍しい現象が観測されました。」
三つの惑星じゃなかったの?
そうツッコミたくなったが、“六つの惑星”でも三つピックアップすれば“三つ”になるから良いか…。
「最後の兆しである“水が逆流する現象”は…」
「8月下旬に青森県で、前線や湿った空気の影響で線状降水帯が発生しました。公式な発表で“水の逆流現象”の発生に関するものはありませんが、極地的に…、例えば
巫女さんの住んでいたとされる村の近辺などで発生していても不思議ではありま
せん。」
「三つの兆しはあったんだね。じゃぁ、“日本の心臓”は止まったのかな?」
「はい、9月7日に石破首相が辞任を表明しました。」
「そういえば、首相の辞任表明ってその頃だったねぇ。」
「その後、自民党の総裁選挙や首相指名投票を経て高市首相が誕生し、多くの期待が寄せられています。」
「これが、「新たな鼓動」のことだとされています。」
あれ?
予言、当たってないか?
いや、元々の予言が“社会不安”をフワッと言ってるから当たったような気がしただけだ。
「これらの出来事があった後、巫女さんはお弟子さんの夢に現れ、予言の成就を告げたとされています。」
目津房さんは、「ふんすっ!」と聞こえてきそうなドヤ顔で言った。
「すごい!的中してるじゃん!!」
目津房さんは悦に入っているようなので、彼女の気分を損ねないようリップサービスしてみた。
「そして、巫女さんの2025年の…というか生涯最後の予言は…」
「最後の予言は?」
「明日にしましょう!一旦気持ちをクールダウンしたいので…。」
目津房さんは楽しそうにそう言うと、昨日、一昨日と同様にスキップしながら帰って行った。
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