第7章 東北の「沈黙の巫女」の予言 その4

ピンポーン


インターホンが鳴ったので玄関へ行き、ドアを開ける。


「NMKからきました。」


目津房さんだった。


「私の話の続きを聞いてください!日本は滅亡しますっ!!」


今日も、東北の「沈黙の巫女」さん改め巫女さんの予言を教えてもらう予定だった。


「今日は、巫女さんの2025年に関する予言を紹介しちゃいます!」


「お願いします!」


「2024年の7月、巫女さんの住む村で「空から光の雨が降る」夢を見たという人たちが続出したそうです。」


また、“村人の夢”か。

もうこれ、巫女さんじゃなくて、巫女さんの村の村人が予言してんじゃね?


「そして彼女は、これを“兆し”と捉えて次のような予言をしました。」


「1400年の沈黙を破り、8月15日に光が降り注ぐ。人類の意識が目覚め、静寂に包まれた日本が世界を変える。午後5時47分、影が光に溶け、古き鎖が解ける時、新たな息吹が大地を満たす。」


「この予言は、8月15日の「光の降臨」と人類の意識覚醒を警告したものとされて

います。」


“人類の意識覚醒”かぁ…。

また、“アセンション系”だよ…


「この予言の後、巫女さんは村の丘で数日間空を無言で見上げ、太陽の光を浴びて

いたそうです。」


「そして、この予言を期に、巫女さんの身体は衰えが進行していったと言われています。」


「去年の年末頃にお亡くなりになったんだよね…」


「この予言の「1400年の沈黙」は飛鳥時代から続く霊的蓄積を、「光が降り注ぐ」は精神的な啓示を、「午後5時47分」は東日本大震災の発生時刻5:46を1分ずらした

“再生のシンボル”を、「影が光に溶け」は過去のトラウマの解消を表しているとされます。」


目津房さんの話に“スピ系”の香りが、ほんのり漂い始めた…

“ツッコミどころ探し”の始まりだ!


「実際、終戦記念日直前に日本全国で大規模な平和覚醒デモが同時発生したとされ、終戦記念日の夕方に太陽フレアによる異常なオーロラが観測されたとそうです。」


「このことは、予言にある「光が降り注ぐ」と「午後5時47分」の部分が的中した

ものだと言われています。」


今年の終戦記念日の頃に、大規模デモや異常なオーロラが発生したニュースは見た

ことないぞ…

まぁ、でも…、私が知らないだけで、本当は発生したかもしれないし…

あ、良いことを思いついた!


「目津房さん!ちょっと待っててもらって良いかな?」


「はい?良いですけど…」


ノートPCを玄関まで持ってきて、“対話型AI”のアプリを起動させた。


「ごめん、ごめん。続けてもらって良いかな?」


目津房さんは訝しがる素振りを一瞬見せたが、すぐに続きを話始めた。


「また、「影が光に溶け」は、少し時間が経って8月23日に行われた日韓首脳会談において、日本の歴史認識に対する立場を確認し、安定的で未来志向の関係構築を明示した日韓共同プレスリリースが発表されたことを指して的中したとされています。」


「これは、80年目の終戦記念日を起点とした、過去の戦争のトラウマを克服する

象徴と言われています。」


トラウマを克服って…

いつもの日韓首脳会談で言ってることと変わりがないような…。


「巫女さんの2025年の予言って、このことを言っていたんだねぇ…。」


“ツッコミどころ”…もとい、疑惑を胸に抱きながらも目津房さんに怪しまれないように合いの手をいれた。


「いいえ、これだけではありません!」


「ですが、次の予言も話してしまうと更に時間がかかってしまうので、続きは明日にしますね!」


目津房さんは楽しそうにそう言うと、昨日と同じようにスキップしながら帰って行った。

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