第7章 東北の「沈黙の巫女」の予言 その3
ピンポーン
インターホンが鳴ったので玄関へ行き、ドアを開ける。
「NMKからきました。」
目津房さんだった。
「私の話の続きを聞いてください!日本は滅亡しますっ!!」
今日は、東北の「沈黙の巫女」さん改め巫女さんの予言で、昨日の続きを教えてもらうことになっていた。
「次に巫女さんが予言を行ったのは、2007年の秋頃だとされます。」
「集会所に村人を集めて、巫女さんはこう予言しました。」
「金貨の塔が崩れ、影の糸が絡みつく。豊かなる者が乞う日が来る。冬の風が全てをさらう前に、根を張れ。」
「これも解説がなきゃ何のことを言ってるかわからないね。」
「この予言は、2008年の世界金融危機、リーマンショックと言ったほうがわかり
やすいですかね?のことを言っているのだとされています。」
「あー、リーマンショックね。」
「「金貨の塔」っていう言葉で、経済に関係することかも…って思ってたよ。」
「そうですね。「金貨の塔の崩れ」は米投資銀行のリーマン・ブラザーズの破綻の
ことだと言われています。」
「そして、「影の糸」はサブプライムローン危機の連鎖を、「豊かなる者が乞う」は
破綻に伴う混乱や失業者の増加を、「冬の風」は危機の長期化を表しているとされています。」
「当時は大変だったみたいだね。」
「そうですね。日本も株価の大暴落や外需の落ち込みによる輸出不振、それらを原因としたGDPの下落などで大変だったようですね。」
「当時、私はまだ幼かったので記憶があまりありませんが…」
「私も、母親が「今月も家計が苦しい」みたいなことを言っていた記憶しかない
なぁ。」
「あ、でも私の上司が、ちょうどそこ頃に就活中だったみたいで、「リーマンショックがなければ、もっと良い会社に就職できたのになぁ…」ってぼやいているのを聞いたことあるかもw」
「「お気の毒に…」としか言いようがないですね。」
「ぼやきを聞かされるほうの身にもなってもらいたいよw」
「ふふ、そうですねw」
「次の予言に移りますね。」
「巫女さんは、2009年の春頃にも、こう予言したとされます。」
「海が生命を飲み込み、青き水が黒く染まる。魚の群れが逃げ惑う時、陸の民は目を覚ます。波の記憶が大地を覆い、忘れし者が思い出す日が来る。」
「これもどういう意味なの?」
「実は、この予言は他にも関連する予言があるんです…」
「関連する予言?」
「では、関連する予言についても一緒に紹介してしまいましょう!」
「巫女さんは、2010年の冬、村で異常に強い寒風や異様な山鳴りが観測されたのを、彼女は“兆し”と捉えて次のような予言をしました。」
「海が若き魂を飲み込む。春が来る前に未来が沈む。」
「両方とも“海”が関わってくるみたいだけど、どっちも何のことやら…って感じだねぇ。」
「2009年の予言の「海が生命を飲み込む」は津波の被害を、「青き水が黒く染まる」は放射能漏れによる海洋汚染を、表しているとされ…」
「2010年の予言の「若き魂」は若年層の犠牲を、「未来が沈む」は津波や原発事故による破壊と喪失を、それぞれ表しているとされます。」
「これって…」
「そうです。“東日本大震災”のことを予言していたとされています。」
「「たつき諒」さんの予言が有名だけど、巫女さんも予言していたんだね…」
ちょっと待てよ。
この予言…っていうか巫女さんの予言って“つい最近”話題になったんだよな?
これも“後だし”だよな…
私は、予言の信ぴょう性についての正常な判断力を取り戻していた。
「そういえば、巫女さんの住んでいた村って東北地方だったよね?」
「はい、そうですが?」
「巫女さんの村も被害を受けたんじゃ?」
「彼女の予言は、彼女の住む村の住人には伝えられていたそうで、被害は最小限に
抑えることができたそうです。」
「そうなんだね。良かったよ。」
「巫女さんは震災発生後、山奥で7日間食を断ち、無言で座り続けたそうです。」
「彼女の死後、お弟子さんがこのエピソードを発表することで、「沈黙の巫女」と
呼ばれることとなったようです。」
あれ?霊視の精度を上げるために「沈黙の誓い」を立てたから、「沈黙の巫女」って呼ばれるようになったんじゃなかったっけ?
だけど、目津房さんに聞いたところで無視されるんだろうな…
「ここまでの予言が、巫女さんが的中させた代表的な予言とされています。」
「これから、巫女さんの予言のうち2025年に関するものを紹介しようと思うのですが…」
「今日はこれくらいにして、続きは明日にしましょう!」
そう言うと目津房さんはスキップしながら帰って行った。
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