第7章 東北の「沈黙の巫女」の予言 その2
ピンポーン
インターホンが鳴ったので玄関へ行き、ドアを開ける。
「NMKからきました。」
目津房さんだった。
「私の話の続きを聞いてください!日本は滅亡しますっ!!」
今日は、東北の「沈黙の巫女」さん改め巫女さんの予言について、目津房さんに教えてもらうことになっていた。
「それでは巫女さんの予言について、まずは的中したとされる予言を紹介しますね!」
「1989年の夏に、巫女さんの住む村で「金色の泡が村を覆う」夢を見たという人
たちが現れたそうです。」
「1989年って…、結構昔のことなんだね。」
「そうですね、巫女さんの年齢は不詳なんですが、ご年配な方だったんでしょうね。」
「そして彼女は、これを“兆し”と捉えて次のような予言をしました。」
「泡立つ川が干上がり、黄金の葉が散る。豊かなる秋の後に、長い冬が訪れる。根を深く張れ、偽りの流れに惑わされるな。」
「これってどういう意味?」
「これは、かつての“バブル経済”の崩壊とその後の余波に関する予言とされています。」
「「泡立つ川」はバブル経済そのものを、「黄金の葉」は“実体経済に見合わない高騰した株価や地価”のことを言っているとされます。」
「そういわれるとバブル経済のことを言ってる気がするな。」
「そんなバブル経済を「豊かなる秋」と表し、バブル経済崩壊後のいわゆる“失われた30年”を「長い冬」と表しているとされています。」
「なるほどねぇ。よくテレビでバブルの頃の映像が流れるけど…」
「“クラブみたいなところで、若い女性がピチピチのミニワンピ着て扇子を振ってる”のを見ると「偽りの流れに惑わされるな!」って言いたくなる気持ちもわかる
なw」
「ふふ、そうですね。ちなみにそういった女性が着ていた服は“ボディコン”って言うらしいですよ!」
「へぇ、そうなんだ…」
目津房さんが意外な豆知識を披露した。
いや、まぁ、目津房さんも女性なんだからファッションのことを知っていても不思議ではないか。
「次に巫女さんが予言を行ったのは、2001年の春頃だとされます。」
「巫女さんの住む村で「笑い声が悲鳴に変わる」夢を見たという人たちが現れたそうです。」
「そして彼女は、これを“兆し”と捉えて次のような予言をしました。」
直前の予言と前振りが同じだった。
「若者の笑いが叫びに変わる夜が来る。花火の光の下、群れが一つに溶け、闇の波が押し寄せる。喜びの頂で、静かなる涙が流れる。灯りを守れ、影に惑わるな。」
「これってどういう意味?」
私も直前の予言と同じリアクションをとった。
「これは、2001年の明石花火事故のことを予言したものとされており…」
「明石花火事故?」
「はい。2001年7月、兵庫県明石市の花火大会会場近くの歩道橋で、約6千人の観客が殺到したことで群衆雪崩が発生してしまい、死傷者が発生してしまったという事故のことです。」
「そんな事故が起こってたんだね…」
「「若者の笑いが叫びに変わる」という部分は、観客の喜びから事故の悲劇への転換を、「群れが一つに溶け」は密集状態になった混雑具合を、「闇の波」は群衆雪崩の
惨状を、それぞれ表しているとされます。」
「「喜びの頂き」は何を表してるの?」
「わかりません!」
「わからんのかーい!」と心の中で叫んだ。
「しかし、「静かなる涙」は被害者たちの無念を表しているとされています。」
「悲惨な事故だったんだね…。巫女さんのこの予言が、もっとみんなに伝わっていたら事故は防げたのかな…?」
「彼女の予言は、村で秘匿とされていましたから…。」
そういえばそうだった。
「…と、結構話込んでしまったので続きは明日にしましょう!」
そう言うと、目津房さんは踵を返して去って行った…。
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