第6章 エリオ・ブレスレンの予言 その5

ピンポーン


インターホンが鳴ったので玄関へ行き、ドアを開ける。


「NMKからきました。」


目津房さんだった。


「私の話の続きを聞いてください!日本は滅亡しますっ!!」


今日は、ついにエリオ・ブレスレン改めエリオおじさんの、日本に関する予言が

クライマックスを迎える…。


「エリオおじさんの日本の予言、その最後のものは…」


「「日本が物質と精神のバランスを示すモデル国となり、世界の新文明を導く」

です!」


「なんかスケールが大きくなったねw」


「それで、どうやって日本は世界のモデル国になるの?」


「2027年に日本は“心の統一”を成し遂げるんですが、2028年頃から世界各国で日本への注目が高まります。」


「“人類の通貨”の倫理要素が経済を再設計し、GDP成長ではなく幸福指数や共同体貢献度へ指標をシフトしたことが評価されるんでしょうね。」


「また、日本人の精神性も競争から協力へ転換できたことも一因でしょうね。」


「これらが欧米の物質主義社会にも波及していき、2030年頃には世界の大部分が

日本と同じ価値観を共有することになると、エリオおじさんは言っています。」


「なんか、世界中がラブアンドピース最高!って言ってる感じだねw」


「ふふ、そうですねw」


「ですが…」


目津房さんの表情が、若干“悪い”ものに変化した…


「今の物質主義社会で権力や財力を持っている人たちが、このような変化を指を

くわえて見ているでしょうか?」


「というと…?」


「「ディープステート」って知ってますか?」


「え?」


目津房さんの話がいきなり陰謀論チックになった…


「政府を裏で操る“闇の政府”と言われていて、情報機関や金融、産業界の上層部が“公の”政府の政策や選挙を操っているのです。」


「そして、そのような人たち…ディープステートが、日本のような“心の統一”を

「はい、そうですか」と受入れるわけがありません!!」


だんだん雲行きが怪しく…、いや、むしろ“いつも通り”の雲行きになってきた。


「つまり、世界中がラブアンドピースになる前に、戦争や内戦などが起こると?」


目津房さんの話に合わせてみた。


「そうです!日本が中心となった“心の統一”を良しとしないディープステートが、世界に戦乱を巻き起こすのです!!」


「そして、その戦乱の果てに…、人類は滅亡す・る・ん・で・す!!!」


出た!目津房さんの“こじつけ滅亡”出た!!

目津房さんはこの時の“滅亡笑顔”が一番似合っている。

私はそう思った。


「それって、あなたの希望的感想ですよね?」


「でも!ディープステートは、みんなにラブアンドピースになってもらっては困るんです!!」


「いやいや、そもそもディープステートって都市伝説でしょ?そんな人たちはいないって!」


「いーまーすっ!!」


「いないって!!」


「だからモテないんだと思いますっ!」


「モテるかモテないかは人によるでしょ!」


「もういいですっ!!!」


ドンッ

目津房さんにドアを無理矢理閉められた。

私はドアを開けて見ると、目津房さんは「ぷんすか」という体で帰っているところ

だった。


それにしても…

今回のエリオおじさんの予言、目津房さんのオリジナル要素を除けば別に悪いことは言ってない気がする…

だけど、なんか“捏造された話”のような感じがするんだよなぁ…。

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