第4章 マヤの予言再び その4
ピンポーン
インターホンが鳴ったので玄関へ行き、ドアを開ける。
「NMKからきました。」
目津房さんだった。
「私の話の続きを聞いてください!日本は滅亡しますっ!!」
目津房さんは、昨日に引き続き、マヤの予言にある意識の変革が引き起こしたで
あろう事象について、説明をし始めた。
「意識の変革が引き起こした事象はマンデラ・エフェクトの他にも、マルチバース
理論、日本語では多元宇宙論ともいいますね、それを根拠にして「古い世界」の宇宙と「新しい世界」の宇宙の融合が始まったからだと主張している人もいるらしい
です。」
「また、SNS上で「時間がおかしい」、「意識がおかしい」と主張する書き込みが増えてきているとされますが、これも意識の変革が関連しているのではないかと言われています。」
あれ?
SNS上の「時間がおかしい」っていう投稿が増えたって話は、デマじゃ
なかったっけ?
「その他にも社会的、世界的な情勢によって少しずつ人類の意識が変革していると
言われてますね。」
「何が原因で意識の変革が起こってるの?」
「気候変動やパンデミック、技術革新が原因ですね。」
「パンデミック期に始まった在宅勤務などの新しい働き方の普及や、SNSの普及、
AI技術の発展などにより、人類の意識は確実に変革していると言われています。」
「また、SDGs意識の高まりやLGBTなどのジェンダー関連の問題へ関心が高まっていることも、意識の変革に影響を与えていると考えられています。」
近頃話題になっているトピックがテンコ盛りである。
まぁ、そういうもののおかげで、私も昔と考え方が変化しているのは自覚している
ので、否定し難かった。
でも、そんなことを言い始めたら、“何でも”意識の変革に寄与することになっちゃうからなぁ…。
「さらに、“ホピ族の予言”にある“青い星”も2025年に現れ、人類の意識の変革を加速させると提唱している人もいます。」
“ホピ族の予言の青い星”も、この前でっち上げだってことになったじゃん…。
「最後は数字です。」
「数字?」
「2025年12月21日、この数字を分解すると…」
「2+0+2+5+1+2+2+1=15、1+5=6…」
「数秘術で“6”は“変革”を表す数字なんです!」
「はあぁ…」
空いた口がふさがらなかった。
“意識のアセンション”、“マンデラ・エフェクト”、“マルチバース理論”…
普段あまり聞かない「それっぽい単語」。
“デマを真実のように語る”、“最近話題のトピックをそれとなく取り入れる”、“他の予言とコラボする”、“数秘術を取り入れる”…
見事なまでの「胡散臭いものを取り入れる技術」。
まるで『最高級の食材を使って、一流のシェフに作られたエセ予言のフルコース』といった様相を呈していた。
このフルコースならば、息子に毛嫌いされている陶芸家も「美味い!」と絶賛するに違いない。
「そして、意識が変革した人としていない人…、彼らは次第に対立を始めるん
です。」
「最初は静かな対立なのですが、だんだんとエスカレートしていき、暴動から内戦へと発展していきます。」
「そして、内戦で日本は滅亡するの?」
「そうです!日本は!滅亡!!す・る・ん・です!!!」
いつもの爽やかな笑顔で目津房さんは言った。
前回もそうだったけど、今回も滅亡までの流れが雑だった。
「それって目津房さんの感想ですよね?」
「感想ではありません。状況的に内戦に発展するのは確定的に明らかです!」
滅亡モードに入った目津房さんは手に負えなかった…。
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