第2章 冝保愛子の2025年予言 その5
ピンポーン
インターホンが鳴ったので玄関へ行き、ドアを開ける。
「NMKからきました。」
目津房さんだった。
「私の話の続きを聞いてください!日本は滅亡しますっ!!」
今日は、ついに“冝保愛子さんの2025年に関する予言”がクライマックスを
迎える…。
「昨日までにお話した現象が現れた後、冝保さんの予言では、「2025年に世界は二つに分かれる」とされています。」
「“新しい意識に目覚めた人々の世界”と“古い価値観にしがみつく人々の
世界”に…。」
「この分離のために、“全ての人々”が“意識上”で選択をせまられることになるそう
です。」
「この“選択”は、分離されたそれぞれの世界の人たちに“対立”や“分断”を起こすと
されています。」
「その対立や分断が原因で、戦争とか起こったりするのかな?」
「そうです!第三次世界大戦が勃発して、ドカーン!で滅亡ですっ!」
本当にこの人は滅亡することが大好きなんだなぁ、そんなことを思わせる最高の笑顔で目津房さんは言った。
それにしても…。
今回の「冝保愛子の2025年予言」、支離滅裂が過ぎやしないか?
スピ成分も大分濃かったし…。
そんなワケで私はツッコミどころ…、もとい疑問点を目津房さんにぶつけることに
した。
「目津房さん、質問して良いかな?」
「はい!どうぞ!」
「最初の“33”とか“11”とかの数字の話って、予言にあんまり関係ないような気が
するんだけど…。」
「それはきっと、冝保さんが意識して、「霊的な目覚め」のメタファーを予言回数や日数に盛り込んだんですよ!」
「冝保さんの講演を行った場所…、名古屋、福岡、仙台、東京、沖縄、大阪を線で
結んでも、六芒星にはならないんじゃないかなぁ?」
「なります!な・る・ん・で・すっ!!」
「『時間がおかしい』っていう投稿を、SNS上で私は見たことないんだけど、目津房さんは見たことあります?」
「見ましたよ!見まくりましたよっ!!「あー、私と同じ人がいっぱいいる!」って思った気がします!」
目津房さんの目が泳いでいる…。
「古代文明調査制限委員会って本当にあったの?」
「きっとあったんですよ!秘密の組織なんですから、公の記録がないのは当たり前
ですよ!」
「“新しい意識に目覚める”か“古い価値観にしがみつく”か、どうやって選択するの?」
「それは…、“意識”上で行われるんです!夢とか、普段の何気ない行動で気づく
とか…。」
「うーん…。」
「どうかしましたか?予言に何か問題でもありますか?」
「なんか、それっぽい言葉を使ってフワッとさせてるっていうか…。」
「“謎の組織”だとか“宇宙人”だとかが出てきちゃうと信ぴょう性がなくなると
いうか…。」
「そんなことないです!確実な証拠だって、きっとあるはずなんです!」
「確実な証拠?それは何?」
「きっと、この予言を伝えているインフルエンサーの人なら証拠をつかんでいるはずです!!」
「いや、それって、証拠があることにはならないよね?」
「だからモテないんだと思いますっ!」
「モテるかモテないかは人によるでしょ!」
「もういいですっ!!!」
ドンッ
目津房さんにドアを無理矢理閉められた。
私はドアを開けて見ると、目津房さんは「ぷんすか」という体で帰っているところ
だった。
それにしても冝保愛子さんの予言、パンデミックを当てたところまでは信ぴょう性があったのに、「2025年の予言」になったとたん、急に胡散臭くなっちゃったなぁ…。
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