第2章 冝保愛子の2025年予言 その3

ピンポーン


インターホンが鳴ったので玄関へ行き、ドアを開ける。


「NMKからきました。」


目津房さんだった。


「私の話の続きを聞いてください!日本は滅亡しますっ!!」


今日は、“冝保愛子さんの2025年に関する予言”がテーマだった。


「冝保さんは、死の直前に予言を行い、親族に対して「2025年に、人類に大きな

試練がやってくる」と言ったそうです。」


「また、自らの予言を47冊のノートにしたため、これらのノートを20年間封印することとともに、遺族に託したそうです。」


「そんなものがあったんだ。」


「冝保さんの死去から20年後の2023年頃、奇しくもパンデミックが納まりつつある頃に、遺族の判断で徐々に公開されていったようです。」


「それで、“人類にやってくる大きな試練”って何なの?」


「それでは、冝保さんの「2025年予言」について詳しく説明しますね!」


「お願いします!」


「冝保さんの2025年予言は、実は1992年から始まっているんです。」


「そんなに前から?」


「はい。実は、1992年という年が重要なんです。」


「どこが重要なの?」


「1992年から2025年までの期間は“33”年間です。」


「“33”という数字には意味があって、この数字は「霊的な目覚め」や「重大な転換」を表しているのです。」


目津房さんの講釈が、だんだんスピってきた…。


「また、予言を始めた1992年12月21日から、予言が実現する2025年12月21日まで、じつに“12,053”日なんです。」


「この“12,053”という数字の各桁を足し合わせると…」


「『1+2+0+5+3=11』で“11”になります。“11”の数字の意味も「霊的な目覚め」

なんです!」


目津房さんの話がだんだん香ばしくなり始めていたが、面白いので黙っていた。


「そして、冝保さんが行った予言の回数にも意味があるんです。」


「1992年に1回、1993年に3回、1994年5回、1995年8回…」

「1996年13回、1997年21回、1998年に34回の予言を行っています。」


「1、3,5、8、13、21、34…これは「フィボナッチ数列」と呼ばれるもので、あらゆる生命現象に現れる神秘的な数列なんです!」


「きっと冝保さんは、宇宙の根本原理を意識していたんですよ!!」


“こういう系”のお話って、数字に特別な意味を持たせたがるよなぁ…、そんなことを考えていた。


「さらに、冝保さんが講演を行った日付と場所にも重要な意味があったのです。」


「日付と場所?」


「1993年3月21日、春分の日に名古屋、」

「1993年6月21日、夏至の日に福岡、」

「1993年9月23日、秋分の日に仙台、」

「1993年12月22日、冬至の日に東京で、それぞれ講演を行っているのです。」


「この講演を行った日に意味があるんです!」


「二至二分がなんか関係あるの?」


「これは、太陽の軌道が特定の角度になる日と一致します。」


「つまり、春分が“0”度、夏至が“90”度、秋分が“180”度、冬至が“270”度になるん

です!」


「いや、当たり前でしょ!それが“二至二分”なんだからっ!!」


私のツッコミを無視して、目津房さんは続ける…


「そして、これら4都市に1995年までに講演を行った沖縄と大阪を加え、各都市を

線で結ぶと…」


「巨大な六芒星が浮かぶんですっ!!」


私は頭の中で、名古屋、福岡、仙台、東京、沖縄、大阪のだいたいの位置を

思い出して、線を引いてみた・・・が、どう考えても六芒星にはならなかった。


「また、各講演でのテーマと順番にも意味があると言われています。」


「名古屋では“始まり”、福岡では“変化”、仙台では“浄化”を…」

「東京では“再生”、沖縄では“記憶”、大阪では“統合”についてお話されたそうです。」


「この、始まり、変化、浄化、再生、記憶、統合の順番は、人類の精神的進化の

プロセスと同じだと言われています。」


「六芒星と精神的進化のプロセス…、もしかしたら、冝保さんは日本全体を“日本人意識変容装置”のように見立てていたのかもしれません…。」


無駄に話が壮大になってきて笑いそうになった。


「話の区切りも良いので、今日のところはこれくらいにして、続きは明日に

しましょう!」


そう言うと目津房さんはスキップしながら帰って行った。

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