第3話 ダメンズのお誘い

タムラくんは、アパートの自室に着くと、卓上のスマホに手を伸ばした。かつての恋人で、現在は女友達の亜由美さんに電話をかける。数回のコールの後、彼女は、出た。

「ハイ、タムラくん。」

「俺は、ジャズ喫茶店の「はるみ」で、バイトをするよ。」

「へぇー。時給はいいの?」

「また、嫌らしいことをきくね。」

「だって気になったんだもん。」

「そんなことより、なぁ、亜由美。」

「何よ。どうしたの。」

「俺たちは、又ちゃんとお付き合いしないか。お互い無事大学を卒業したし、付き合うべきだよ。運命だと思う。」

「何よ。藪から棒に。そんなことをいきなり言われてもね。」

「俺たちは付き合うべきだと言っているんだ。いいタイミングだろ。やっぱり、俺は、亜由美を放っとけない。チューとかエッチとかではなくて、なんかあんたが好きなんだ。だから付き合いたいではなくて、君は俺と、付き合うべきなんだよ。」

「何言っているのよ。。自分ばかりでさぁ。何で、あたしの気持ちを考えないのよ。自分が好きだから、あたしに付き合うべきだなんて強引よ。バカね。」

「えっー。それではだめなのかい。男らしく強引に誘ってみたのだけどなぁ。」

「女の子の気持ちを考えなさいよ。」

「じぁー、亜由美さんは、どうなんですか。」

「あたし。内緒よ。」

「俺、亜由美さんを、絶対に幸せにするからね。俺、いずれ、就職するからね。だから、お願いします。僕と付き合ってください。」

「タムラくんって、本当にバカね。いいわ。お付き合いしてもいいわ。」

「やったー!嬉しい。ハッピーだ。亜由美さんが恋人だよ。嬉しい。」

「しょうがない人。」

「じゃあ、明日の夜に、逢おうよ。「はるみ」でね。」

「もう、わかったわ。」

「じゃぁ。またね。」

タムラくんは、電話を切った。


亜由美さんにしてみれば、やんちゃで、向こう見ずで、ダメンズのタムラくんが、愛おしく、刺激的で、面白かったのである。つまらない教科書みたいな男より、ずっと楽しくて、いい。

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