第24話 静かな夜明け

崩れ落ちた神殿の瓦礫の間から、月明かりが差し込んでいた。


嵐のような戦いの余韻を残しながら、風は不思議なほど穏やかに吹き抜けていく。




 仲間猫たちが一匹ずつ立ち上がり、互いに寄り添いながら「終わったんだ」と小さ

く頷いた。


その目は涙ぐみながらも、安堵と誇りに満ちている。





 柊はふらつきながら陽介の隣に立ち、胸に顔を埋めた。




「……ご主人さまがいたから、僕は最後まで戦えたよ」




 陽介はその頭にそっと手を置き、柔らかく笑った。




「違うさ。お前がいたから、俺も立てたんだ」



 互いの言葉が心を支え合い、温かな静けさが二人を包み込む。






 やがて、崩れた神殿の奥にあった泉が光を帯びはじめた。


失われていたはずの清らかな水が、月光を映して静かに輝く。


石像に刻まれた猫たちの姿も淡く光を宿し、国そのものが息を吹き返したかのようだ

った。



 仲間猫たちは柊の前に並び、深く頭を垂れる。


「王子と、そのご主人さまに感謝を」



 陽介は照れくさそうに目を逸らしたが、柊は誇らしげに微笑んだ。





「……でも、まだ終わりじゃない」


 柊は月を見上げ、静かに呟いた。


「猫の国を守る旅は、きっとこれからも続く」



 陽介は深く息を吸い込み、真っ直ぐに彼を見た。


「俺も一緒に行く。お前のご主人さまとして」




 二人の視線が重なった瞬間、夜の闇の向こうから淡い朝の気配が広がっていった。




 ――静かな夜明けが、二人と猫の国を包み込んでいく。



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