第24話 静かな夜明け
崩れ落ちた神殿の瓦礫の間から、月明かりが差し込んでいた。
嵐のような戦いの余韻を残しながら、風は不思議なほど穏やかに吹き抜けていく。
仲間猫たちが一匹ずつ立ち上がり、互いに寄り添いながら「終わったんだ」と小さ
く頷いた。
その目は涙ぐみながらも、安堵と誇りに満ちている。
◇
柊はふらつきながら陽介の隣に立ち、胸に顔を埋めた。
「……ご主人さまがいたから、僕は最後まで戦えたよ」
陽介はその頭にそっと手を置き、柔らかく笑った。
「違うさ。お前がいたから、俺も立てたんだ」
互いの言葉が心を支え合い、温かな静けさが二人を包み込む。
◇
やがて、崩れた神殿の奥にあった泉が光を帯びはじめた。
失われていたはずの清らかな水が、月光を映して静かに輝く。
石像に刻まれた猫たちの姿も淡く光を宿し、国そのものが息を吹き返したかのようだ
った。
仲間猫たちは柊の前に並び、深く頭を垂れる。
「王子と、そのご主人さまに感謝を」
陽介は照れくさそうに目を逸らしたが、柊は誇らしげに微笑んだ。
◇
「……でも、まだ終わりじゃない」
柊は月を見上げ、静かに呟いた。
「猫の国を守る旅は、きっとこれからも続く」
陽介は深く息を吸い込み、真っ直ぐに彼を見た。
「俺も一緒に行く。お前のご主人さまとして」
二人の視線が重なった瞬間、夜の闇の向こうから淡い朝の気配が広がっていった。
――静かな夜明けが、二人と猫の国を包み込んでいく。
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