第25話 旅立ちの朝
神殿の戦いが終わって数日。
崩れた壁は修復され、泉は清らかに輝きを取り戻していた。
猫たちの国は再び穏やかさを取り戻し、あちこちで笑顔が広がっている。
柊は王子として認められ、仲間猫たちに囲まれていた。
けれど、その横顔はどこか遠くを見ているようだった。
「ご主人さま……僕、決めたんだ!」
陽介の方を振り返り、柊は真剣な瞳で言った。
「闇は消えたけど、まだ国のあちこちに影の残滓がある。
だから僕は――猫の国を守る旅に出たい」
陽介は少し目を伏せた。
都会での日常、仕事、ひとりでの生活――。
そのすべてが頭をよぎったが、胸の奥で答えは決まっていた。
「……わかった。俺も一緒に行く。お前のご主人さまとして」
柊の耳が震え、尻尾が嬉しそうに揺れた。
「本当に……? ずっと一緒だよね?」
「ああ。当たり前だ!」
◇
夜明けの空に、淡い光がし込む。
猫の国の仲間たちが二人を見送りに集まった。
「王子さま、陽介さま……どうかご無事で」
柊と陽介は並んで歩き出す。
背中には、猫たちの温かな視線。
寄り添う二人の影が、朝の光に長く伸びていた。
――こうして、猫の国を巡る新たな旅が始まった。
二人の物語は、まだ終わらない。
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