第23話 光と闇の果て

黒い影が再び咆哮(ほうこう)し、神殿は崩れかけていた。

月光が差し込む中、柊(しゅう)と陽介(ようすけ)は肩を並べて立つ。


「……もう逃げない!」

「俺たちは必ず、闇を越える!」


 仲間猫たちが円を描くように周囲を取り囲み、最後の力を注いで結界を張った。

その中央で、二人の胸の光が重なり合う。



 闇の本体は黒い腕を振り下ろす。

柊(しゅう)は白銀の爪で受け止め、陽介(ようすけ)が背後からその腕を支える。


「ご主人さま、もっと強く!」

「わかってる!」


 二人の力がひとつになり、闇を押し返す。

だが闇は嗤(わら)う。


「人間が王子の力を縛る……お前は結局、孤独だ」


「違う!」

柊(しゅう)が叫ぶ。

「僕は一人じゃない! 人間だからこそ……僕のご主人さまなんだ!」


 その言葉に応えるように、陽介(ようすけ)の胸から光が溢れ出す。

二人の光がひとつに溶け合い、まばゆい白い輝きとなって広間を照らした。




 闇と光がぶつかり、神殿全体が震える。

仲間猫たちが祈るように声をあげる。


「柊(しゅう)……!」

「ご主人さま……!」


 重なった鼓動が最後の一撃を導く。

「これで――終わらせる!」

 爆発的な光が闇を貫き、黒い影は悲鳴と共に崩れ去っていった。




 静寂の中、差し込む月明り。

柊(しゅう)は息を切らしながら陽介(ようすけ)の腕に寄りかかった。


「……ご主人さま……勝ったよね?」

「ああ。俺たちで……闇を越えた」


 二人の視線が重なり、確かな絆がそこに生まれていた。

 ――光と闇の果てに、ようやく辿り着いたのだ。




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