第22話 心の迷宮
闇が蠢(うごめ)き、神殿の中に黒い霧(きり)が広がっていく。
次の瞬間、陽介(ようすけ)と柊(しゅう)は別々の幻の世界に引き込まれた。
◇
陽介(ようすけ)の前に現れたのは、倒れた柊(しゅう)の姿。
必死に呼びかけても声は届かず、伸ばした手は空を掴(つか)むだけだった。
「……俺は、また守れないのか……?」
胸をえぐるような痛みに、心が崩れそうになる。
一方、柊(しゅう)の前には冷たい目をした陽介(ようすけ)が立っていた。
「お前なんて、拾うんじゃなかった」
「ご主人さま……?」
膝(ひざ)から崩れ落ちる柊(しゅう)。
「やっぱり……僕はひとりぼっちだあ……」
◇
そのとき。遠くから聞こえた声が、二人の幻を貫いた。
「――柊(しゅう)!」
「――ご主人さま!」
心臓の奥に届くその呼びかけが、幻を揺らす。
陽介(ようすけ)は柊(しゅう)の笑顔を、柊(しゅう)は陽介(ようすけ)の温もりを、はっきりと思い出した。
「俺は……絶対にお前を守る!」
「僕だって、ご主人さまに捨てられたりはしない!」
二人の想いが重なった瞬間、胸の奥から光が溢れ出す。
黒い霧(きり)は焼き尽くされ、幻影(げんえい)は崩れ去った。
◇
再び神殿の広間に戻った二人。
互いの手を強く握りしめ、視線を交わす。
「俺たちは……もう負けない!」
「うん、ご主人さま。次は……決戦だ!」
――試練を越えた二人の瞳には、迷いのない光が宿っていた。
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