第22話 心の迷宮

闇が蠢(うごめ)き、神殿の中に黒い霧(きり)が広がっていく。

次の瞬間、陽介(ようすけ)と柊(しゅう)は別々の幻の世界に引き込まれた。



 陽介(ようすけ)の前に現れたのは、倒れた柊(しゅう)の姿。

必死に呼びかけても声は届かず、伸ばした手は空を掴(つか)むだけだった。


「……俺は、また守れないのか……?」


 胸をえぐるような痛みに、心が崩れそうになる。


 一方、柊(しゅう)の前には冷たい目をした陽介(ようすけ)が立っていた。


「お前なんて、拾うんじゃなかった」


「ご主人さま……?」


 膝(ひざ)から崩れ落ちる柊(しゅう)。


「やっぱり……僕はひとりぼっちだあ……」



 そのとき。遠くから聞こえた声が、二人の幻を貫いた。


「――柊(しゅう)!」

「――ご主人さま!」


 心臓の奥に届くその呼びかけが、幻を揺らす。

陽介(ようすけ)は柊(しゅう)の笑顔を、柊(しゅう)は陽介(ようすけ)の温もりを、はっきりと思い出した。


「俺は……絶対にお前を守る!」

「僕だって、ご主人さまに捨てられたりはしない!」


 二人の想いが重なった瞬間、胸の奥から光が溢れ出す。

黒い霧(きり)は焼き尽くされ、幻影(げんえい)は崩れ去った。



 再び神殿の広間に戻った二人。

互いの手を強く握りしめ、視線を交わす。


「俺たちは……もう負けない!」

「うん、ご主人さま。次は……決戦だ!」


 ――試練を越えた二人の瞳には、迷いのない光が宿っていた。

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