第21話 決戦の幕開け

月明りに照らされた神殿の扉が、重々しく開かれていった。

冷ややかな風が吹き込み、広間の奥からは闇の気配があふれ出る。


「……来たな!」


低い声が響いた。

姿を現したのは、黒い霧(きり)のような影――その中心に、異様に光る瞳が浮かんでいる。


「柊(しゅう)王子……そして、その人間。

お前たちこそ、我にとって最大の脅威(きょうい)だ」


その声に、胸が強くざわめく。だが隣に立つ柊(しゅう)の手が、俺の手をしっかり握っていた。


「陽介(ようすけ)。怖がらなくていい。僕がいるから」

「……ああ。お前ひとりじゃない」


二人の視線が重なった瞬間、柊(しゅう)の耳と尻尾(しっぽ)がふわりと現れ、金色の光が広間を照らした。

その光は、闇のざわめきを押し返すように広がっていく。


「――行こう、ご主人さま!」


闇が唸(うな)りを上げ、神殿の柱が揺れる。

俺は深呼吸し、強い決意でうなずいた。


「……ああ、終わらせよう。この戦いを!」


こうして――猫の国と人間界、二つの世界を揺るがす最終の決戦が幕を開けた。

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