4話〜すきで、すきで、だいすき〜
//SE 椅子から立ち上がり、歩く。化け物の声がうっすらと聞こえるところまできて立ち止まる
「せんぱい?」
(背後から声が聞こえる)
//SE 駆け足で近寄る
「よかった。やっぱり、まだここにいたんだぁ!……なぁに、先輩、変な顔してる」
「そんなところに、一人でいるなんて、何をしていたんですかぁ?……もしかしてぇ、夢遊病とかぁ?」
(わざとらしく可愛い声)
//SE 後ろから抱き着く
「んふふっ。先輩は、私と一緒にいてくださいっ!なぁんとなく帰る方法がわかったんですけど、たぶん気長にぃ、待つしかないみたいですからっ。ふふっ」
「ずっと、わたしと、ふたりで。ね」
(ゆっくりとじっくりと)
「……嫌ぁ?はぁ?なんで」
「私が嘘ついてるって?…あぁ、なるほど。先輩も帰る方法分かったんだ。ふふっそれで、一人だけで帰ろうとした、とか?ははっ笑える」
(低いトーンで)
「ふ~ん、そんな慌てたように違うって言われても、ねぇ」
(半笑いで)
「ああ、昨日口が滑っちゃたの、きいてましたぁ?だからか。……だから一人で私を置いて帰ろうとしたの?」
「ねえ、先輩。帰る方法が分かったなら、私の気持ちもぜぇんぶ分かったってことでしょ?」
「私が、先輩の事、すきで、すきで」
(呪詛のように)
「だいすきなこと」
(まっすぐと)
「うん、たぶんね。先輩の読み通り、ここは……両想いになると出られる電車じゃなくて。両想いだと出られなくなる電車だよ」
//SE 電車のブレーキ音
「満たされたい電車とか化け物が必要なのは両想いの二人だけ。好きあってない二人は扉から出ればきっと光に包まれて元の場所に帰れる」
「でも、でもだよ。日記の真実の愛を見つけた人はさ、光に包まれた先に何があるのかも、見れてないし、そもそもね、可能性が高いってだけで、好き合ってなければ化け物に襲われずに光に包まれるかもわからないんだよ。完全にランダムかもしれない」
「だか、だからさぁ、ここに居てもいいんじゃない?……ねぇ、先輩。そうでしょう?そうって言ってよ」
「……いや、なの?そうなんだ。嫌なんだね」
「そっか、そうだよね。先輩はそうだもんね。知ってるよ。ずぅっと知ってる。先輩は誰にでも優しくて、優しいからすべてを受け入れようとする。……私みたいなのとかね。普通に考えてさ、友人の距離感なわけなくない?死ぬかもしれないって、命の危機だったとしてもさ、手を繋ごうなんていわないでしょ。それなのに、先輩は昨日の私が口を滑らすまで、気が付きもしなかった!」
「どんだけ、私に興味ないの?!……私は、先輩とならずっと、永遠にここにいてもいいって、ここにいたいって、思っているのに!」
「意味分かんないんだけど!せんぱいは、私へのそういう気持ちは1ミリもなかったんですか?絶対に死なないって思えるくらい、私に、興味ないの?」
(徐々に涙声に)
「ふざけんな、ふざけんな、ふざけんな!」
//SE 抱きしめる音
「そういう態度だから、勘違いしちゃうんだよ!わたしのこと好きじゃないならちゃんと、突き飛ばしてよ!できないならっ」
//SE 尻もちをつく音
「痛っ……。くそっ、くそぉ……うぅ、ひっ、て、いうか、普通にっ、あぶっないじゃんっふ、ばけっものっんくっのところにっ、ふぅ飛び込まないとっいけっないのに。ぇんぱいがっしんっだら、わたっし、わたし、どうしたらいいか、わかんなっ、わかんないもん。せんぱいのっことがっ大切だもん。私のっことっも大切っにしてっしてよ」
「やだあ。死のうとしないでよぉ。私と永遠をいきようよぉ」
「うわああああん」
(大号泣)
//SE ハンカチを手渡す
「うわぁあ、ありがとっ、ございま、すっ」
「ううう、このハンカチ、いい匂いがして、むぅかつくぅ」
「……ずっ」
(鼻をすする)
「先輩って人を好きになったことないでしょ。わかるよ。だって、赤ちゃんみたいな顔してるもん」
「いや、絶対にないよ。私にはわかるもん……私のこれとは、全然違う。でしょ」
「なぁんか、いっぱい泣いたらちょっとスッキリしちゃった。私ね、先輩が思ってるよりずっと前から先輩の事が好きだよ」
「だいすきだよ」
「だめ、何も言わないで、分かってるから」
//SE スカートの埃をたたき、立ち上がる音
「じゃ、帰ろっか。ふふっ、ねえ、手繋ぐ?」
「えー、いいじゃん。最後なんだし。それに万が一帰れなかった時は手を繋いでた方が連携もとれやすいよ」
「うん……うん。ありがと。先輩のそういう優しいところも大好き」
//SE 電車の扉が開く音
//SE 化け物の声
「あははっ、電車も帰れって言ってるのかなぁ」
「じゃあ、せーので、行こうね。一緒に言おう」
「せぇーのつ」
//SE 鈴の音
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