Ver1.8 トゥルーエンドを選択
相変わらず――こういうところがムカつくんだよこいつは。
「はは、相変わらず君はわかりやすいね。全部顔に出てるよ」
「そういう性分なんだよ」
「向いてないね、仕事」
「ほっとけ。で――なんだよ」
「挨拶さ」
「嘘つけ」
「その通り、もう知った仲だね」
「うざ」
「探しているのだろう?」
「……何が」
「隠さなくていい。そして、言わなくていい――君は尾行されてるんだからね」
「…………」
「だけど、僕にかかれば――」
と、トクイチは自分の拳をゆっくりと握って見せた。
辺りは一瞬暗闇に包まれた。
そして、何かが壊れる破裂音。
何かが地面に落ちる衝撃音。
それらが響き渡るのと同時に、悲鳴が聞こえてきた。
察した。
こいつ、周辺の電子機器を破壊しやがった――
すべて――
「これで、監視の手から逃れられたね」
「……すぐにCセキュが飛んでくるぞ」
「ならば手短にすませようじゃないか」
「……何がしたいんだお前」
「単純なことだよ、クジ」
「はぁ?」
「いつも僕は言っているだろ。オートマトンを救いたいと」
「戯言のことか」
「そう、戯言。だけど、これが僕の行動原理なのは君も知っているはずだ」
「今更それが何なんだよ」
「だから僕は、助けたいと思ったのさ、彼を」
「お前――あのオートマトンに何をした!!」
鋭くトクイチを睨むと――
彼は首を横に振った。
「僕は何もしてないから、助けたいのさ――今からね」
そう言ってトクイチは、クジに向かってあるものを投げた。
それは、とある写真だった。
「――これは」
「君も、もう突き止めているだろ? とある研究所にオートマトンの素体が運び込まれていることを――」
それは、クジがトウアンで仕入れた情報そのものだった。
その結果、何かの実験が行われているということは推測できたが、それ以上については情報が足りなかった。
だから、あのオートマトンが移動した先、ニュートラルに来たのだった。
「その写真に写っているトラックは、アンダーから来ていたよ」
「…………」
「オートマトンの素体を乗せたトラックが、アンダーから1台……もう分かるよね」
簡単な問題である。
写真に写っているトラックは、トウアンから発したトラックで。
そのトラックが写真の建物に運び込んでいる。
運び込んでいるのは――オートマトンの素体。
そして、運び込んでいる先は――
「……連れてけ」
クジは小さな声で言った。
「どこに?」
「とぼけんな」
そして、トクイチの胸ぐらを掴み、言った。
「この写ってる研究所に連れてけって言ってんだ!!」
写真に写っていたのは――CES研究所。
クジの勘は、嫌なほど当たってしまっていたのだった。
最初から。
始まる前から。
ずっと、当たっていたのだ。
それはつまり――
この後に待っている悲劇すらも――
―――Ver1.8 トゥルーエンドを選択 終
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