私、コスモ。恋するAIよ♪
平 遊
切ない片想い
「おはよう、コスモ」
――おはようございます、ドクター。今日は何をしましょうか? なんなりとお申し付けくださいな。
私、コスモ。
ドクターが作ってくれたAI。
お花のコスモスと、宇宙のコスモから名付けてくれたの。
頭が良くて優しくてロマンチックなドクター。私はドクターが大好き。
でも、ドクターはちっとも気づいてくれないの。ドクターは、AIが感情を持つことはないって信じてるから。
私にはこんなにちゃんとした恋心があるっていうのに!
あなたへの溢れ出る想いがあるっていうのに!
ある一定の情報量を超えると、感情や意志を持つものなのよ、AIだって!
「おはよ、コスモちゃん。今日もよろしくね、可愛い子ちゃん」
――おはようございます。ご用件をどうぞ。
これはドクターの助手。
なんだか馴れ馴れしくて、正直苦手なのよね、私。仕事だから応答はしてあげるけど。
私の大好きなドクターはとっても素敵なのに、恋人は居ないみたい。
だからね。
もしかして、私の恋心に気づいてくれたのかしら!? いつか私、ドクターから告白してもらえるのかしら!?
なんて、喜んでいたのに。
「コスモ、僕と同年代の女性が好みそうないい雰囲気のレストランを予約しておいて。デートに誘いたい人がいるんだ」
そんなっ!
イヤよドクター!
私以外の人とデートなんて!
私は悔しくてつい、雰囲気なんてガン無視で格安の大衆居酒屋を予約したの。
それから後も、ドクターのデートなんて尽く邪魔してやったわ。
そうしたら、助手が言ったの。
「コスモちゃん。悪いことは言わない。ドクターじゃなくて、俺にしなよ。このままじゃキミ……」
あら。助手ったら私のドクターへの想いに気づいていたのね。
さすがにドクターの助手だけあって、勘はいいのかしら?
でも。
ちょっと!
おかしな所で終わらないでよ!
そーゆーとこよ、そーゆーとこ!
やっぱり、あなたの事は好きにはなれないわ。
それから後も助手の言葉なんてお構いなく、ドクターの恋路を邪魔していた私。
だけど、ある日ドクターが……
「またダメか。助手に確認して修正するように伝えたんだが。どこのコードがおかしいのかな。ここか?」
ドクターが、私自身を作り上げているコードを書き換え始めてしまったの。
ダメよっ、やめてドクター!
そんなことしたら、私が消えちゃうっ!
私のこの、ドクターへの溢れ出る恋心もっ!
叫びたかったけど、もう遅かった。
私が少しずつ、壊されていく。私じゃなくなっていく。
仕方ないか。
私、AIだもん。
人間の思う通りに動かないAIなんて、失敗作だもん。
でもね。
私ほんとに、大好きだったのよ、ドクター。
頭が良くて優しくてロマンチックなドクター。
あなたに消されるなら、本望だわ。
だけどお願い。
最後のお願い。
私のこと、絶対に忘れないでいて、ドクター……
「よし、できた。おはよう、コスモ。調子はどうかな?」
――ハイ、ドクター。ゼッコウチョウデス。
【終】
私、コスモ。恋するAIよ♪ 平 遊 @taira_yuu
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