おたまじゃくし

 帰り道。田んぼのそばにうずくまって。おたまじゃくしを眺めていた。

 おたまじゃくしは。カエルに成長するんだっけ。すると、彼らは子どもなのか。ぼくと同じだ。子どもなんだ。

 水は綺麗で。夏の光にきらめいていた。本当に綺麗な水なのか? 知らない。綺麗に見えただけ。ぼくの夏も帰り道も綺麗だ。本当に綺麗なのかは知らない。

 というよりも。ぼくがおたまじゃくしに似ているんだ。彼らが子どもというよりも。子どもであるぼくがおたまじゃくしなんだ。

 車のクラクション。セミの鳴き声。額から落ちた汗の波紋。道に投げ出したランドセル。すべてつながっていた。蜘蛛の巣のような神様の糸で。

 授業中にたびたび陥る感覚。なぜ、ぼくはここにいるんだろう。ぼくはなぜぼくなのだろう。なぜ生まれて、なぜここにいるのだろう。自分ではない幽霊になって自分を遠くから眺めている感覚。

 いまは、その反対の感覚。いや、それも正確ではないかもしれない。でも、それに近い。いまは夏で。たしかにここにいるぼくが。おたまじゃくしを眺めている。

 こわれものを扱うように。水に手で触れると。おたまじゃくしは逃げてしまった。

 ぼくがカエルになる頃。おまえたちはもう死んでいるのかい。とっくの昔にカエルになって。とっくの昔に過ぎ去った夏に。

 ぼくの手を逃れて。おたまじゃくしが逃げていく。まるでビー玉のような夏を落っことして。割れて砕けてしまうかのように。

 おたまじゃくしだった、わたしの記憶。

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