第14話 クエスト受注

「いらっしゃいませ。そしてお帰りなさいませ。クエストの受注ですか?」

ギルド・ポルトアリア。受付嬢はメイド服のような服装を着る小さな少女であった。


「あ、ええと。そうです。受注ですね」

「何のクエストになりますでしょうか。あ! そもそもこちらのギルドに加盟はお済みでしょうか?」

「スミマセン。それも初めてです」

「かしこまりました! それでは、お名前など、こちらに記載ください」

ええと。とりあえず偽名が良いか。そう思い、自らは田中太郎たなかたろう。チューンの分として、佐藤花子さとうはなこと記載した。

書いたことを告げると、彼女は次に音叉おんさを取り出した。


「基本的に冒険者のランクをまず測らせてもらうために、こちらを鳴らしていただけますか?」 

「これを? ええと。こう?」

机の端に音叉を弾く。すると、チーンと甲高い音が少し響く。

「え、えーと。音力は無い感じでしょうか」

少女に尋ねられる。

「ふぇ? 音力? ええと。どうなんだろう」

「その音叉はご自身のヒビキの量を推し量ることができます。胸の前に持ってもらい、ご自身の音を奏でて貰えば良いのですが……」

「ゴジシンのオトですか……」


とりあえずやってみた。音叉を再び受け取り、胸の前で構える。

――音。音ねえ。

とりあえず、ふんと心の中で力んでみた。しかし。

全く音は鳴らない。


「どうやら、音力は持たれていないご様子ですね。それですとランクはまずはEランクとなります。あ、でも御武勇があればランクはあがりますから! はい!気を落とさず!」

何故か励ませられる。


だが、音力は俺には、やはりなかったようであった。音力を持つ者はチューンが行ったように、指を鳴らすと、自身に適した楽器を召喚できるという。しかし俺にはそれができなかった。今ここで分かったのだが、自身に音力が無いということ理由なのだろう。


「ええと、そしたらとりあえず魔族退治のクエストを受けたいんだけど」

「魔族退治……。それってもしかしてSランク任務のあちらでしょうか? もしそうでしたら、それはできかねます」

「え! どうして」

「危険だからです。Sランクになりますと、最低でもBランクの方でなければ。それでも危険ですので、この依頼は応募した冒険者全体で20名を超えた大パーティの編成をギルドから斡旋あっせんしております」

「つまり、俺じゃ受けられないってこと?」

「申し訳ございませんが……。あっ!」

受付嬢は無茶なお願いをする俺に断りを入れようとした。しかし、その瞬間、音叉が何者かに取られる。


チューンだ。

そして、彼女は音叉を胸の前に掲げる。すると、キーンとするどく、巨大な音が響いた。

その音は部屋の中にも響き渡り、皆の視線が一気に集中する。

「こ、この音力は。Aランク、いや。Sランクですっ!」

おおっ、と周りのドヨメキが聞こえる。

「こ、これでいいですか。依頼はお受けしてよろしいでしょうか?」

「も、もちろんですとも!では、詳細をお伝えしますので、こちらに」

そういって、受付上は個室の方に案内をした。


デーモン族が発見されたのは、今から半年前になるらしい。

西国にも魔物はいるが、ある時からそれらに異変が見えたらしい。統制だった動きが見られたという。

「そこで、領主は兵士を派遣し捜査に乗り出した」

その結果、ポルト・アリアから南下した森林の一部に誰かが住んでいた痕跡を発見。

残されたヒビキや、食糧の類から人間以外の魔族が潜伏していることを認識したという。

そこで、さらに調査を進めると、ある者が「こいつ」を見たという。


「ちょうど明日にでもクエストパーティの会合があるはずですので、またお越しになってみてください」

そういって、冒険者タナカタロウとサトウハナコはSランク任務を無事受託した。

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