第13話 ギルド潜入
チューンを人目に晒すのは得策では無いと思い、俺が街の人に聞き込みを行った。
その時に「王自ら、愚民と会話させてしまうなど、従者失格でございますっ」と言い、近くの壁に自分の頭を打ちつけた。
最早、ツッコむのも疲れたので、無視しつつ人たちに話を聞いて回った。
すると、このポルト・アリアには町長がいるらしく、その屋敷の近くにギルドがあるらしいという情報を掴んだ。
そして、そこまで徒歩で向かう最中、街のガス灯に白い旗がいくつも掲げられていることに気がついた。
白い旗はよくみると、絵柄が描かれており白い虎の絵が描かれている。
「あれはウェストの国旗です。国の聖獣であるビャッコウの姿が描かれているようですね」
ビャッコウ、ビャッコ、白虎。なるほど。現世でも東洋の四聖獣として、西を司っていたのは白虎だったはず。
この世界はどうも、現世との連動を感じる。
そうこうしてギルドたる建物の前に辿り着いた。三階ほどの建物で、他の住居や商店より一回り大きく感じた。
「入ってみるか」
心は自然と興奮していた。ゲームの世界でしか見たことがない場所に男の子としての心が湧き立つ。
カランコロンとドアを開くと、熱気をまず感じた。それと同時に物々しい武器を構えている者や反してギターやトランペットなどを携えた者達に1階は溢れかえっていた。
そして、イメージ通り。室内には無数の机が並び、その奥にはカウンターがあった。しかしその中で一際賑わいをみせていたのは巨大な掲示板の前だ。
「行ってみましょうか」
チューンは少し具合が悪そうだった。若干足取りが不安定だ。
「大丈夫か?」
「は、はい。ここの中には音力を持つ者が多数います。その連中の振動がノイズで……。申し訳ありません」
彼女のバフォメット特有の感覚なのだろう。
ゆっくりと人混みへと向かっていく。すると、その掲示板には無数の張り紙が。
『急募。ランクB相当。魔獣ウルフぇンド退治。報酬2500ゴールド』
『ゆる募。ランクE相当。特産貝ムルムルの採取。報酬200ゴールド』
なるほど、これは依頼書が貼られているようだ。おそらくこのギルドに所属している冒険者、傭兵がこの内容を見て依頼、もといクエストを行っているのだろう。
しかし、ゆる募って。死語だろうに。
「マオ様。あちらを!」
彼女は懸命に指さす。その方向を見ると、悪者、いや悪魔とはこういうものだ!と言わんばかりの絵が描かれていた。
巨大な角、裂けた口に光る牙。そしてオマケに漆黒の翼が備わっている。
『募集中。ランクS相当。正体不明の魔族討伐。報酬10万ゴールド』
皆こぞって、その内容を見ているようでもあった。
「この様相。デーモン族に似ております」
「討伐依頼、か。依頼主は領主になってるな。ドライブはこいつだってことか」
チューンはこくり、と頷く。
「ドライブのことなので、少なくともこの街には何度か戦闘を仕掛けているはず、その読みが当たりました。しかし、良かったです」
「よかった? 討伐命令が出ているのに?」
「あ。ええと、失礼致しました。チューンとしては、少なくともまだ生きていることが分かったので、嬉しく思いそう言ってしまいました」
そうか。
ドライブたる男に色々棘を感じる物言いであったが、彼女なりに心配はしていたようであった。
「この依頼はどうやら、ギルドの中でパーティを編成するはずです。そのパーティの中に侵入できればドライブの足取りを効率的に追うことができるかもしれません」
パーティ、おそらく冒険者達の集団を言うのだろう。確かに彼女の言う作戦は良い案かもしれない。
「それで行こう。ただ足で情報を探すのも一苦労だ。あの受付に行けばいいのかな」
「そうかと思われます……。申し訳ありません。私、少しまた座らせていただいてもよろしいでしょうか……」
「大丈夫か。俺がいくから、そこで待っててくれ」
「ありがたきお言葉……」
そして俺は受付まで足を運ぶ。
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