『実話怪異ファイル・異界見聞』実話怪談投稿コーナー(2001年6月号)
『実話怪異ファイル・異界見聞』(幻視堂出版)2001年6月号
実話怪談投稿コーナー
投稿:「不落不落さん」
宮城県仙台市・匿名男性(仮名・当時28歳)
キャプション:「風に揺れる首から上だけの顔(投稿者スケッチをもとに作成)」
これは、いまから三年前、まだ大学生だった友人から聞いた話です。
彼はその数か月後に、首を吊って亡くなりました。
その友人が、生前どうしても気味が悪い、と私に打ち明けてきたことがありました。
ある深夜、彼は自宅近くの道を歩いていたそうです。
街灯もまばらで、人通りのない農道。そこを、小学校高学年くらいの少年が、すっと追い越していったといいます。
イラスト1:薄暗い農道で赤紫の少年が立ち止まり、振り返っている後ろ姿
「こんな時間にこんな場所で?」と不審に思いつつも、立ち止まってこちらを見ている少年に目を合わさずに追い抜かす。
すると、また後ろから少年が走って追い越して立ち止まり、こちらを振り返ります。
薄暗い街灯のあかりが届くか届かないかの位置に立っているその顔をよくよく見ると、鬱血したように赤紫く、かなり古めかしいボロボロの着衣と相俟って異様な感じを受けたそうです。
友人は心配になり、少年に「どうしたの」と声をかけたそうです。
すると、少年は黙って走り出しました。
ところが、数メートル先で立ち止まり、じっとこちらを振り返って見ている。
そのやり取りをもう一度繰り返し、これはなにか助けを求めているのか?と思い、友人は少年を追いかけました。
町外れの、今では半分以上は誰も住んでいない古い平屋の町民住宅。その中の空き家のひとつに少年は入っていきました。しかし、あとを追って恐る恐る入ったその狭い室内に、少年はいなかった、と。
そして、その部屋の闇の中で、腫れ上がった巨大な顔を見たと彼は言いました。
口は大きく開かれ、舌がだらりと垂れ下がっている。
生臭く、強烈な腐ったような口臭が漂い、吊るされたように中空でブラブラと揺れていたのだそうです。
あまりの恐ろしさに友人は卒倒し、気がつくと翌朝、少し離れた雑木林にひとりで倒れていた。
夢か現か半信半疑ではありましたが、その日以来、彼はその顔を何度も夢に見るようになったと打ち明けました。
暗闇に浮かぶ、縊死して鬱血して腫れあがり、紫に変色して膨らんだ舌を垂らした、知らない誰かの怖ろしい顔。
イラスト2:中空に浮かぶ巨大な顔、口が開き舌が垂れている
友人があんなことになってから、私が個人的に調べたことです。
戦前のことだそうなので、かなり古い話ではありますが、友人が住んでいた家の近く、ちょうどそのあたりで、当時12歳の少年が母親の再婚相手に殺害され、首吊り自殺に偽装されかけた事件があったそうです。
少年の家は極貧で、保険金目当てだったとも伝えられています。
少年の遺体は縄が外れないよう特殊な結び方でかなり高い木の枝にくくりつけられ、なかなか下ろせず、数日のあいだ風にブラブラと揺れていたといいます。
それ以来、この地元ではいつしか首を吊ったご遺体のことを「不落不落(ぶらぶら)さん」と呼ぶようになったそうです。
また、殺されたのは、少年が母親の再婚相手と“引き合わされる”場面が8度目の時だったとも伝わっており、 「たとえ夢の中でも、その顔を8度見たら、その人は首を吊って死んでしまう」といった都市伝説、怪談話もしばらく残っていたとのことです。
私の友人も、夢で8回見てしまったのでしょうか。
編集部注:
※この投稿は「仙台市近郊の実話」として寄せられましたが、戦前の事件については確かな公的記録は確認できません。
※「不落不落(ぶらぶら)さん」という呼称は、他地域では聞かれない非常に珍しい表現です。
※編集部では、投稿者のプライバシーを守るため、一部の地名・年齢等を変更しています。
※日本の都市伝説「ブラブラ」についてのおそらく初出と思われる記事
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