2燈:The Hanging Faces
the Blur Blur
番組名:Shadows Across the World(日本版:『世界怪異譚』)
英国 Channel 4 製作/VICE Studios UK 制作協力/2017年放送
初出:英国の公共系チャンネル「Channel 4」の深夜枠
フォーマット:1話約45分・全6話構成
特徴:毎回異なる国・文化の“似た都市伝説”を3つ同時に扱う比較民俗ホラー・オカルト系ドキュメンタリー番組
配信歴:日本では2019〜2021年の間、Amazon Prime Videoにて配信
現在:日本語版は配信終了
Episode 4:「The Hanging Faces」
Sub:Korea’s “Puluk Puluk”, America’s “Blur Blur” and Japan’s “Bura-Bura”
(日本版:エピソード4:「吊られた顔たち──日本・アメリカ・韓国の奇妙な一致」)
以下はこの番組の文字起し抜粋です。
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00:00–03:00|【オープニング】
映像:
闇の中にぶら下がる“顔”のイメージが3カット交差。
霧の中の輪郭、鏡の奥、そして誰もいない田んぼの夕暮れ道。
ナレーション(低い声):
“Across the globe, people speak of faces… faces that dangle, twist, and disappear.”
「世界のあちこちで、語られる“顔”がある。揺れ、消え、思い出せない顔たち。」
“They are rarely remembered clearly. But once seen, they’re never fully forgotten.”
「はっきりとは覚えていない。でも、完全に忘れることもできない。」
“In this episode, we follow the stories of three such faces — from America, Korea, and Japan.”
「今回は、アメリカ・韓国・日本。3つの国に現れた“吊られた顔”の物語を追う。」
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03:01–15:00|【Segment 1:Blur Blur(USA)】
【映像構成】
冒頭:VHSノイズが走る
郊外の平屋住宅/木造校舎の廊下
チラチラ揺れる天井の蛍光灯
子供の描いた手書きスケッチ:「ぼやけた顔」「舌を出した笑顔」「誰かの顔?」と書かれたメモ
小学校の壁新聞:「Scary Things I Saw as a Kid」と題されたコーナーに “blur blur” と手書き
ナレーション(低く、冷静に):
“In countless American towns, from Illinois to Idaho, scattered reports from children describe a blurry, dangling shape — never quite in focus.”
「イリノイからアイダホまで、アメリカ中の町で、子どもたちの記憶に残る“ぶら下がったぼやけた何か”──それは、決して焦点の合わない形。」
“Not a monster. Not a ghost. But… a face. Maybe.”
「それは、怪物でも幽霊でもない。……おそらく、顔。たぶん。」
字幕:証言者 A(Josh, 32歳・ネブラスカ州):
“I saw it through the frosted glass in my grandma’s basement. It was round, big… swinging. I thought it was a balloon, but…”
「ばあちゃん家の地下の、すりガラス越しに見た。丸くて、大きくて、揺れてた。最初は風船かと思ったけど……」
“When I looked closer, I swear… it was a face. With a tongue.”
「よく見ると……顔だった。舌が出てたんだ。」
“It didn’t scare me. Not at first. It just… felt wrong.”
「最初は怖くなかった。ただ、見てると変な気分になるんだ。妙に……居心地が悪い感じ。」
ナレーション:
“The Blur Blur is never seen directly. It appears in dreams, behind glass, through fog, or in childhood drawings.”
「ブラー・ブラーは、正面から見た者はいない。夢の中、ガラス越し、霧の中、そして子どもの絵の中に現れる。」
“It hangs. It swings. It waits.”
「ぶら下がって、揺れている。そして、待っている。」
字幕:投稿された児童画(2004年・ウィスコンシン州)
絵:赤いクレヨンで描かれた「笑っている顔」、目はぐちゃぐちゃ。下に「he was blurring...」と走り書き。
ナレーション:
“Several teachers across Midwestern states recalled students drawing similar ‘blurred faces’ during quiet time, sometimes naming it ‘blur blur’ without knowing why.”
「中西部の教師たちは、“静かな時間”に生徒が“ぼやけた顔”を描くのを何度か見たと証言している。なぜか、その多くが『ブラー・ブラー』という名前を使っていた。」
字幕:証言者 B(匿名・メール投稿):
“I’ve never told anyone this. I think I saw it in a dream… but it was my own face. Swinging.”
「誰にも言ったことないけど……夢だったかも。でも、あれ、自分の顔だった。」
“I was maybe eight? The face looked wet. And the tongue — it looked like it was trying to say something.”
「たぶん8歳くらいだった。顔は濡れてるように見えて……舌は、何か言おうとしてるみたいだった。」
ナレーション:
“Every person describes it slightly differently. But one detail always remains: the tongue.”
「描写は人によって異なる。だが、ひとつだけ共通しているのが“舌”である。」
“The Blur Blur never speaks. It simply… appears, and waits to be remembered.”
「ブラー・ブラーは決して喋らない。ただ、現れて、思い出されるのを待っている。」
“And maybe, just maybe… we all saw it once. But forgot.”
「もしかすると──私たち全員が、一度はそれを見ている。ただ、忘れているだけなのかもしれない。」
カット映像挿入:
VHS風の画面にノイズ
“blur blur” と手書きされた落書きノートが一瞬だけ映る
最後に、「あなたは いつ 最後に 夢の中で 誰かの顔を見ましたか?」という文字が一瞬フラッシュ
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15:01–25:00|【Segment 2:불룩불룩 / Puluk Puluk(Korea)】
【映像構成】
ソウルの深夜、地下鉄ホームにある半身鏡。駅の清掃員が通り過ぎるたび、鏡の奥に一瞬だけ「ふくらんだ影」。
マスクをした整形前後の女性の顔写真モンタージュ(ノイズ混じりの演出)。
都市のネオン、薄暗い美容外科ビルの外観、タイルの割れた化粧室。
脈動音とともに、鏡越しに膨張していく唇の極端なクローズアップ。
ナレーション(落ち着いた女性の声):
“In Seoul’s late-night subways, in empty public restrooms, and behind beauty clinics long since abandoned…”
「ソウルの深夜の地下鉄、誰もいない公共トイレ、そしてもう閉業した美容外科の鏡の奥に──」
“Some say a face appears. A face that isn't yours. But knows you.”
「“あなたではない顔”が現れるという。けれど、その顔は──あなたを知っている。」
“They call it Puluk Puluk. A sound word. 불룩불룩.”
「その名は、“プルクプルク”。腫れて、波打つ音を意味する、韓国語の擬態語。“불룩불룩”。」
字幕:証言者(女性・20代/江南):
“整形の後、一ヶ月くらい毎晩、洗面所の鏡に顔が映りました。”
“でも……それは私の顔じゃなかった。”
“似てるんです。角度もメイクも。でもどこか違う。表情が……ねじれている。”
“唇が、まるで心臓みたいに脈打ってて……まばたき、してなかった。”
映像挿入:
2006年に閉鎖された江南区の美容外科の廃墟。壁の鏡が割れ、背後に赤く腫れた顔が一瞬映る。
ナレーション:
“Some believe the Puluk Puluk is the ghost of a failed transformation — a woman who lost herself while trying to become someone else.”
「プルクプルクは、変身に失敗した亡霊だという説がある。誰かになろうとして、自分を見失った者の成れの果て。」
“Others say… it appears when you forget someone who once loved you.”
「別の説では──それは、“かつてあなたを想っていた誰か”を、完全に忘れたときに現れる。」
字幕:匿名ネット掲示板投稿(2008年・Naver怪談カフェより):
“化粧室の鏡で、笑ってた。私に似てたけど、もっと目が腫れてて……口が…불룩불룩だった。”
“次の日から、写真に自分の顔が写らなくなった。”
ナレーション:
“The name 'Puluk Puluk' imitates the swelling of tissue, the pulsing of suppressed guilt. But it may also be the sound of someone trying to speak… without lips.”
「“プルクプルク”という音は、腫れあがった肉の鼓動、あるいは忘れた罪悪感の波打ち……
……もしかすると、“唇なしで話そうとする音”かもしれない。」
映像演出:
鏡に自分を映す女性。ふと表情がズレる。唇が불룩불룩(プルクプルク)と上下に脈打つ。
鏡の中の顔だけがまばたきをする。
ナレーション:
“Puluk Puluk does not appear in front of you. Only in reflections. Only in the corner of your memory.”
「プルクプルクは、あなたの前には現れない。
鏡の中だけ──記憶の片隅にだけ。」
“And what it reflects… is not your face. But the one you left behind.”
「そこに映るのは、あなたの顔ではない。
あなたが忘れた、あの人の顔だ。」
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25:01–35:00|【Segment 3:ブラブラ(Japan)】
【映像構成】
夕暮れの農道。水の張られた田んぼ。どこか薄紫がかった空。
遠くに見える、赤紫色の顔の少年がじっと立っている。
風の音だけ。カメラが近づくたびに、少年は少しずつ遠ざかるように揺れる。
突然、少年の姿が消える。視界が開けた先に、“顔だけの何か”が中空に浮かんでいる。
口が異様に開き、舌が長く濡れてだらりと垂れ下がり、まるで風に吹かれる提灯のように揺れる。
ナレーション(再び男性の低い声):
“In Japan’s rural regions — where fields stretch beyond the edge of towns, and dusk comes quietly — there are stories of a boy.”
「日本の田舎では、町の端の向こうに田が広がり、静かに夕暮れが訪れる場所に、“ひとりの少年”の話がある。」
“He appears suddenly. Never speaks. Just watches. Some say his face is purplish — as if breathless.”
「少年は突然現れ、決して話さない。ただ、じっと見ている。
顔色は赤紫、息の詰まったような色をしているという証言もある。」
“He looks lost. Or maybe… he’s waiting for someone.”
「迷子のように見える。いや、もしかしたら──誰かを待っているのかもしれない。」
字幕:体験者(70代男性・神奈川県小田原市)
「気がついたら、農道の先に立っとった。ひとりぼっちで、こっち見とった。赤い顔して。」
「“大丈夫か?”って声かけたら、ぴゅっと消えてしもてな──代わりに、顔だけが、浮いとったんや。」
「……首から上だけや。口が開いとってな、舌が、ずっと……ぶらぶらぶらぶら、揺れとった。
くさかった。獣でもない、腐ったもんでもない、……死んだ人の臭いや。」
ナレーション:
“It’s called ‘Bura-Bura’. The name echoes both the swinging motion… and a sense of something unfinished.”
「それは“ブラブラ”と呼ばれる。その名前は、ただ揺れていることを意味するだけでなく──何かが終わっていない、そんな気配も宿している。」
“Some say it smells of death. Others claim you die if you see it eight times. But most who encounter it… simply fall.”
「死の臭いがすると語る人もいれば、“八度見たら死ぬ”という者もいる。
けれど、ほとんどの者は──ただ腰を抜かして、倒れるだけだ。」
映像:
古びたスケッチブックが開かれる。
ページには、首のない少年と、上空に浮かぶ顔の絵がクレヨンで描かれている。
字の読めないメモが横に添えられている:「おれじゃない」「しってるかお」「かおがちがう」
字幕:証言者(中年女性・元小学校教員):
「“ブラブラ”を見たって言う子、昔いたんですよ。“八回見たら死ぬ”って怯えてました。
その子、何度も夢に見たって言ってて──最後に『あれ、私の顔だった』って、ぽつりと。」
ナレーション:
“No one agrees on what the face looks like. Some say it’s a stranger. Some say it’s themselves.”
「誰も、その顔がどんな顔だったか、一致しない。
見知らぬ誰か、という人もいれば──自分だった、という人もいる。」
“But all agree… it was hanging. And it knew them.”
「ただ一つ、誰もが口を揃えるのは──
“それは吊られていた”ということ。
そして、“自分を知っていた”ということだ。」
映像(演出・終わりの余韻):
空に浮かぶ顔。舌が風に揺れる音だけが響く。
カメラがぐるりと回り込むと、その顔が“視聴者自身の顔”と入れ替わっているように見える──
画面が暗転し、虫の音だけが残る。
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35:00–42:00|【Comparative Analysis:共通点と記憶の曖昧さ】
映像:
海外の大学講義室/日本の資料室/韓国の精神医療研究所。
各国の専門家がカメラの前で語る。合間に、各怪異の顔スケッチが重なるように表示される。
登場人物:
Dr. Emma Talbot(エマ・タルボット博士)
英国ケンブリッジ大学・民俗心理学研究者
金炯鎬(キム・ヒョンホ)
韓国・延世大学病院 精神科医/夢判断専門
藤崎圭一(ふじさき・けいいち)
日本・関西民間伝承研究会 主宰
Dr. Talbot(タルボット):
“There’s a striking pattern here. All three legends involve a disembodied face, suspended, and detached from context.”
「3つの伝承には驚くべき共通点があります。どれも“顔だけの存在”であり、ぶら下がっていて、文脈から切り離されている。」
“More than monsters, these seem to be manifestations of fragmented memory.”
「怪物というより、これは“断片化した記憶”の顕現に見えます。」
金炯鎬(キム・ヒョンホ):
“韓国では、夢の中で見る顔に意味があると考えられています。ですが、“顔が変化する”夢は特に危険です。”
“それは、自分の感情の置き場がない時に現れやすい。そして、顔が誰かは…見た人自身も気づいていないことが多い。”
藤崎圭一:
「日本の“ブラブラ”には、変に特徴がないのが逆に怖いんです。姿は語られるけれど、誰だったかが一貫しない。」
「それが“怪談になりきらない怪談”として、ずっとくすぶってきたんでしょうね。」
ナレーション:
“They are faces with no name. Faces that swing just out of reach.”
「それは、名前のない顔。手の届かないところで、ぶらぶら揺れている顔たち。」
“And perhaps… they were never meant to be remembered.”
「もしかすると──そもそも、思い出してはいけない顔だったのかもしれない。」
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42:00–45:00|【Ending Montage:The Hanging Faces モンタージュ】
映像演出:
モンタージュ形式。3つの顔が交互に現れる/重なる/ゆっくり回転していく。
Blur Blur(アメリカ)
(音声:かすれた子どもの声)
“I think I saw it… I think it was my mom. But her tongue… was out.”
「見たんだ……あれはママだったと思う。でも、舌が……出てた。」
映像:
フロストガラスの向こう、白く霞んだ顔。ゆらゆら揺れている。
Puluk Puluk(韓国)
(音声:女性の囁き声)
“그 얼굴… 누굴까? 왜 자꾸, 내 눈에만 보이는 걸까…”
「あの顔……誰? なんで、私の目にだけ映るの……?」
映像:
鏡の中で微かに揺れる顔。唇が불룩불룩と鼓動するように膨らむ。
ブラブラ(日本)
(音声:遠くで風鈴が鳴るような音。草むらで誰かがつぶやく)
「……あれ……顔、やったんか……」
「誰の……顔……や……?」
映像:
夕暮れの空に、舌をだらりと垂らした巨大な顔が、首から上だけでぶら下がって揺れる。
薄暗い風景の中で、腐臭のような音が漂う。
ナレーション(静かに):
“You saw them once. Or thought you did.”
「あなたは、それを見たことがある。……あるいは、そう思い込んでいるだけかもしれない。」
“A face, a memory, a fear… suspended.”
「顔、記憶、恐れ──それらが、吊るされたまま揺れている。」
“And if you see it again… will it remember you?”
「もし、もう一度それを見たとしたら……その顔は、あなたを覚えているのだろうか?」
(番組ロゴが静かに現れる)
Shadows Across the World
Urban Legends Unveiled
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