第19話 はいはい、並んで―

「ボナンザさんー」

 最後の一人が手をあげ、点呼は終わった。

 点呼の途中で旧友? と喋っていたエルナンも発見し、今は彼が隣に立っている。

 点呼の結果、落伍者はゼロだと分かったが、どうにも人数が聞いていた100人と違うような……。群衆の規模を見て100人じゃあないよなあ、と思っていたがこれにかに。

「エルナン、人数が」

「君にしては珍しい、点呼しながらちゃんと数えていたんだね」

「あー、いや、100人じゃあないよなあと」

「あはは、ただ点呼を聞いているだけは手持無沙汰だったから僕がカウントしておいたよ。全部で132人だね」

 気のせいじゃあなかった。いくらおれでも3割も多けりゃ気になるってもんだぜ。1割だと気が付かなかった自信はある。

「やっぱり多いじゃないか……」

「政府が考える以上に最初の開拓民希望者が多かったのかもしれないね。一攫千金を狙うなら早ければ早い方がいい」

「少なくとも初回に関しては希望者が来ているのかな」

「ざっと集まった人たちから聞いた感じそうだね。多少は期待できるんじゃない?」

 両手を開き片目をつぶる彼の心情は俺にも理解できた。

 開拓民の最終的な規模は最終的に1万人を超える予定だ。開拓民の生存はお構いなしにね。もし開拓民がちゃんと暮らしていけてると分かったら、下手したら数十倍の開拓民が送られてくるかもしれない。

 話を戻す。

 砂漠地帯は誰も住むことができない不毛の地と知られている。であるからして、食うに困った最貧困層か闇組織がリベート目的で出してくる人員とか、「強制的」に徴発された人たちが開拓民の大半になると見ていた。

 どんな宣伝をしたのか知らないが、初回の開拓民は希望者で占められているという。強制的に徴発されてくる人に比べ、希望者は何らかの技能を持っている可能性が高い。初回開拓民132人それぞれが何かしらの技能を持っているのなら、できることが広がるってもんだ。

 ただし、132人分の食料を用意しなきゃならねえ。 

「考えるのは後だ。まずは移動しようぜ」

「そうだね。ブロック貨車をもう一台連結して一回で運ぼう」

「ぎゅうぎゅう詰めになるが……」

「ならもう一台増やそうか」

 そうしよう、その分速度をゆっくりにして移動すりゃいい。

 

「みなさんー、こちらへ移動してくださいー」

 今開拓民らがいるオリジンベルには何もない。人工物だけじゃなく、草木一つ生えてもいないのだ。

 そんな何もない土地に放り出された開拓民は思った以上の過酷さに圧倒されているはず。点呼の時も大人しかったし、点呼の後も楽しく歓談している人なんて誰一人いなかった。今の彼らにとっては俺の言葉が一縷の望みって感じになっているんじゃないかと。

 その証拠に誰一人文句を言わず、俺の指示には素直に従ってくれている。

 無言の行軍はなかなか不気味であるが、地下へ続くスロープが見えてきたところでざわつき始めた。

 何もないところに唐突に人工物らしきものが見えたのだから当然な反応だ。しかし、驚くのはまだ早いぜ。

「このまま下へ降ります。降りたら広場があるのでそこで一旦止まります」

 地下へ降りたら、開拓民それぞれから驚きの声があがる。

「な、なんだここ!」

「部屋だ。部屋がある」

「おい、あの巨大な箱は何だ?」

 おー、驚いておる、驚いておるぞ。土魔法の神髄を見るのはここからだ。

 ブロック貨車に全員を乗せ、出発すると驚きは最高潮へ。

 

 ◇◇◇

  

 一ノ谷の駅まで到着した。移動している途中で誰がどんなことができるのか聞いて回ろうと思ったけど、みんな動く貨車に対し理解が追いつかず驚きを通り越して真っ白になっていてさ。聞くどころじゃなかったんだよね。

 一ノ谷の駅はオリジンベルとはまるで規模が違う。そんなわけで駅広場で彼らが再起動するまでしばし待っている。

 一ノ谷の地下は物資を運び入れるための倉庫、予備のブロック貨車を備えているから、地下室が相当広い。オリジンベルは開拓民を運ぶだけなので、駅広場で事足りるからね。

 一方、一ノ谷は開拓民の居住地をはじめとした生活の根幹となる地である。当初は三日月湖の物資に頼る必要があるため、物資集積所も必須だ。

「もう少し時間がかかりそうだから、先に紹介をしておくよ」

 お茶でも飲んで休憩しようかと腰を下ろしたところで、エルナンから声がかかる。

 彼は二人の開拓民を連れていた。二人ともフードを目深にかぶっており、背丈は一人がエルナンと俺の間くらい、もう一人が俺の腰くらいと小柄だ。

 ほら、とエルナンに促された二人はフードを取り、顔を露わにする。

 背の高い方は40代後半くらいの鋭い目をした痩せた男で、気難しそうなこれぞ研究者といった感じの人だった。

「ハリスです。エルナン君と同じ元宮廷魔術師です。ぜひ、クリス様の開拓に協力させていただければと」

「はじめましてクリストフです。宮廷魔術師がこんなところにまで。感謝します!」

 ハリスと握手を交わし、次は小柄な人の方へ顔を向ける。もう一人はクリンした耳に長く白い髭が特徴のノーム族らしき人だ。

 柔和な笑みを浮かべた彼が俺に向けペコリと頭を下げる。

「グリアーノじゃ。未踏の地に未だ見ぬ鉱石があるやもしれんと思い志願させてもらった」

「クリストフです。グリアーノさんは鍛冶職人ですか?」

「細工は一通りできるぞ。主に金属になるが」

「鉱石探しには協力させていただきます。その代わりといってはなんですが……」

 ブロック作成の過程で色んなところを掘り進めるから、変わった色や形の模様やらを見つけたら彼に報告すればいい。

 未だ見ぬ鉱石なんてものがあるか分からないけど、希少金属が発見できたら良い売り物になる。俺じゃあ石を見てもどんな鉱物なのか分からないから、彼に見てもらえると助かるよ。

「他の人たちも準備ができてきたみたいだね」

 エルナンが顎で右側を示す。

 俺たちが挨拶している姿を見た開拓民たちが列を作り始めていた。

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