第14話
公園で、先輩の香りだけを時々感じる日々が過ぎ、とうとう12月。三年生が来なくなった学校は、妙にガランとしていた。
試合の時もそうだけど.......なんで姿を見せてくれないんだろう。
その理由を確かめたい、そう思っていたのに.....もう卒業式にしか、先輩達は来ないんだよな。
同じ学校にいるって、なんて幸せなことだったんだろう。この先、先輩と逢うためには、何か理由が必要になるんだ.......
「三年生の掃除場所が増えて大変だよなー」
「.......」
諒弥が、ぼやきながらホウキを動かす。俺達は三年生が担当していた技術室の掃除当番だった。
「.......なあ、明日お守り買いに行くの、付き合ってくれない?」
ゴミをチリトリで掬いながら諒弥が話し出す。
「......お守り?」
「ああ.....彼女が受験なのに、何にも出来ないのは.......ちょっとな」
そうだった、自分の事で手一杯で忘れてたけど.......諒弥の彼女は三年の先輩だった。
「行く!行く行く!どこの神社に行くんだ?合格祈願だろう。なるほどお守りね。諒弥!お前なかなかやるな」
「そうだけど......なんでお前がそんなに興奮してるわけ?」
「なんでもいいだろう.......よし明日、明日にしようぜ」
そうだよ!この手があったじゃないか、お守り買って先輩に渡しに行く。後輩としても全然不自然じゃないし。
何より先輩に逢う口実が出来る。
明日から冬休み。俺達はさっそく次の日に、お守りを買いに行く約束をした。
合格祈願で有名な神社。初めて来たその場所は、冬休みのせいか学生で賑わっていた。
「......いろいろあるんだなぁ」
「うん。迷うよな」
「.............あのさ.....お前も買うの?」
いくつもあるお守りを手に、悩んでいると隣で諒弥が訝しそうに呟いた。
「.......うん」
「誰に?」
「.........」
「.......もしかして.....和先輩?」
「.......」
「.....黙んなよ。そこで黙ったら認めたと一緒だろ」
「.......う.......うん」
「.......お前さあ.......和先輩のこと好きだろう」
「ふうぇ?」
やばい......不意に核心をつかれて変な声が出た。お守りを選んでいた手が動揺でうろうろしだす。
「.......やっぱりな......夏ぐらいから態度がおかしいと思ったんだ.......お前けっこう分かりやすいし」
「.......変だよな?」
「何が?」
「だって......先輩、男だし」
俺はうろうろしていた手を、ぎゅっと手を握りしめて聞いた。
「別に.......好きになるのに、女も男もないだろ......その人のことが好きになるんだから」
「.......諒弥ぁぁぁ」
その一言に、俺は諒弥を抱き締めようと身体を近づけると、腕を突っ張って阻止された。
「俺にハグはいいから......さあ、選ぼうぜ。やっぱピンクが可愛いかな~」
俺の告白を顔色一つ変えずに認めてくれた諒弥。俺は力強い味方をみつけた気分で、心が軽くなった。
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