第7話 明かされる正体

 混乱した表情のまま上着を受け取ったレオは、リオルの後をついていくうちにすぐにその意図に気づいた。


「やっぱダメだ!これはご主人様のものだろう……俺なんかが着られるわけがない!」


「……こんなことでいちいち騒ぐな。そんなものいくらでもある」


 ためらいながらもレオはおずおずと袖を通したが、途中で動きを止め、訴えるように言った。


「……ご主人様、これ俺には小さすぎて着られないぞ」


 リオルは冷ややかに視線を向ける。


「当たり前だろうが。羽織るんだよ」


 そう言い放つと、リオルが部屋の扉を押し開けた。そこには整然とした家具とベッドが置かれ、暖かな空気が満ちていた。


「こ、ここ…俺が使っていい場所なのか…?」


 辺りを見回したレオは、柔らかなベッドの上にぽふりと倒れ込む。


「うわぁ……俺、今、夢でも見てるのか?」


 リオルは、そんなレオの様子をどこか満足げに眺めた。


「あと、暖炉を用意した。犬は暖かいところが好きだろ。そばに近づき過ぎるなよ」


「犬扱いか……ふん、俺は猫だ」


 レオはベッドから飛び起き、背の低いリオルを睨んだが、言葉とは裏腹に足は自然と暖炉のほうへ向かっていった。


「お前……猫だったのか?その体格で?……確かに、尻尾がやたら長いとは思っていたが」


 リオルが驚き半分に言うと、レオは鼻を鳴らし、得意げに言った。


「そうだよ、俺は猫だ。しかもかなり珍しいオスの猫だ。どうだ、ご主人様?光栄に思えよ。こんな貴重な種を手に入れたんだからな」


「……犬だろうが猫だろうが、俺にとっては同じだ」


 レオの毛が逆立ち、牙を剥き出す。


「なんだと!?俺が犬と同じだって!?」


「主人に逆らう気か?躾が必要だな」


 その言葉を聞き、レオは思わずビクッと身を震わせる。


「あ、あんたも…俺を殴ったりするのか?」


「そんな趣味はない。俺の腕が痛むからな」


 しばらく考え込んだあと、レオは肩の力を抜き、皮肉っぽく笑った。


「そうか、じゃあ俺は安全ってわけか?」


 大きく欠伸をしながら、暖炉のそばで猫のように身体を丸める。


「あー…それにしても暖かくて超快適だな。まるで天国みたいだ…」


「おい、寝るならベッドで寝ろよ。明日からは礼儀作法を徹底的に叩き込むからな。覚悟しとけよ」


 レオは不服そうにベッドに移動し、ちょこんと座ってリオルを睨む。

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