もしもファンタジー要素が消えた世界に一割の異分子が存在してもいいと思いますか?
雨夜類(あまよるい)
第1話 死という気配を気どれば、内なる力が目を覚ます。
それはある日のことだった。
その日の俺は金稼ぎのために金持ちの護衛を受けることにした。
だが、突如として現れた誘拐犯に護衛対象である『サニーリア』を捉えられ、気づいた時には銃口を向けられていた。
そして呆気なく誘拐犯に殺された───はずだった。
この世界はファンタジーとかSFのようなことはない。もしかしたらあるのかもしれないが、俺にとってはこの世界には存在しないものだと思っていた。
だけどそれがどうした。
突然、何かが覚めたかのように世界がスローに……止まっているように見えるようになった。
「……動ける」
時間だけが止まったような世界……正確にいえば僅かながら動いているような気もしない程度に世界の時間は遅くなった。
そんな世界にたった1人、『
「……まずは助けるか」
俺はそう思い、誘拐犯の拳銃を掴もうと銃身を握る。するとどうだろう───頑丈な金属でできた銃身はスポンジのように呆気なくぐにゃりとへし折れ、潰れた。
「………………はぁ?」
これには流石の俺でも顎が落ちた。例えたら腰が抜けたみたいに顎が落ち、口が大きく開いたままの状態と言うのだろうか。……ワンチャン地面に着くのでは?
そんなこんなで停止した世界にて、首元を腕で抱えられているサニーリアを救出しようとすると、さっき起きた謎の怪力が頭によぎる。このまま護衛対象を引っ張ったら良くないような…そんな思いが浮かび上がる。
「……誘拐犯の腕ぐらいへし折ってしまってもいいよな?」
頭の中で試行錯誤する……しかし、知力のない頭では思いつくことはなく、結局、力技で解決することにした。
誘拐犯の腕に触れ──動かす。
ただ動かすのに抵抗はかかることもなく、簡単に退かすことができた。
「あとは助け……そうだなぁ」
俺は口角を上げ、やってみたかったことをすることにした。
俺は誘拐犯の腕を掴み───
───そうして時間は動き始めた。
「…………?」
(……苦し……くない?)
「大丈夫ですかお嬢様」
「……え?」
その声を聞いた私は目を見開いた。
さっき彼は私を捕まえた(?)犯人に銃を向けられていたはずだ。そうだったはずなのに目の前にいる彼は傷一つない。それどころか犯人っぽい見た目の人すら見当たらない。
「………」
「大丈夫ですか〜?」
「え、えぇ、大丈夫…です」
「ならよかった」
何だったのだろうか。先程体験したことが夢だったと言われているような…そんなあやふやな感覚だけが残されていた。
あの後、サニーリアの買い物に付き合っていたのだが、あの誘拐犯を吹っ飛ばしてからは特に面倒ごとに巻き込まれることなく、無事に護衛を終えれそうだ。
「まぁ……最後まで油断するつもりもないがな」
「何か言った?」
「んんや、なんでもないよ」
「そう?」
そんな独り言を誤魔化しつつ、俺とサニーリアは夕日に照らされた帰路を歩いている。
それにしても……最近の女性はよく買い物でたくさん買うようなイメージだったんだが……思ったよりも買ったものは少なく、腕への負担はそこまでかかることなく平然と歩けていた。
そんなふうに歩いていると……彼女…サニーリアは何かしらの決意を抱いたのかその場で立ち止まり、一つ深呼吸をして振り返った。
彼女の顔には何かを決心した表情で、目線で俺を見て、
「──────!」
と……その約束をしてきた。
きっと私は───彼を手放してはいけないと直感的に思ったのだろう。だからなのか、私は彼に約束をした。
「明日も、私の護衛になってくれませんか?そうすれば給料をまた支払わせていただきます!」
そんな────告白のようなお願いを彼に言った。ただ、格好のついたセリフを言ったのに最後のはカッコ悪かったなぁ…とも思った私であった。
もしもファンタジー要素が消えた世界に一割の異分子が存在してもいいと思いますか? 雨夜類(あまよるい) @AMayLui398
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