︎🌟第6話 「はじめての授業」

翌朝。

 鐘の音が校舎に響き渡ると、生徒たちはそれぞれの教室に集まった。


「おはようございます!」

 明るい声とともに入ってきたのは、若い女性教師・アメリア先生。栗色の髪を後ろで束ね、軽やかなローブをまとっている。

「さて、新入生のみなさん。今日は基礎魔法の授業です。失敗しても大丈夫ですから、思いきってやってみましょうね」


 教室がざわめく。

 真凜もルナもシオンも、胸の奥でわくわくと緊張が混じった鼓動を感じていた。



 最初の課題は――「火花を灯す」。

 指先に小さな魔力を集め、炎の種を生み出す練習だった。


「じゃあ、真凜さん。やってみましょうか」

「は、はいっ」


 みんなの視線が集まり、真凜は思わず背筋を伸ばす。

 ゆっくりと息を吸い込み、指先に意識を集中させる。

 ……ポッ。

 赤い火花が、まるで星の瞬きのように指先に現れた。


「わぁ……きれい!」

 ルナが感嘆の声をあげる。

 先生も微笑んで頷いた。

「お見事です。焦らず、きちんと魔力を扱えていますね」


 真凜は胸をなで下ろした。



 次はルナの番。

「えっと……こう、かな?」

 ルナは人差し指をくるくる回して――


 ――ボフンッ!

 盛大な煙とともに、指先から真っ黒なすすが舞い上がった。


「きゃっ! けほっけほっ!」

「だ、大丈夫!?」

 真凜が慌てて背中をさすると、ルナは涙目で笑った。

「ごめんね……ちょっと勢い余っちゃったみたい」


 教室中からクスクスと笑いが起こり、場が一気に和む。


 そして、シオンの番。

「……」

 彼は黙って手をかざし、静かに魔力を流す。

 すると、迷いのない炎がすっと生まれ、安定して灯り続けた。


「さすがだな……」

「落ち着いてる……」

 周りの生徒たちが小声で感嘆する。


 だがシオン本人は淡々と炎を消し、席に戻った。

 その横顔に、真凜は「すごい」と思うよりも先に、なぜか胸がざわめいた。

 ――彼は、どこか自分と同じ“秘密”を抱えているように見えたから。



 授業が終わり、3人で廊下を歩いていると

「ルナ、さっきの黒煙、ほんとにすごかったね」

「えへへ、あれも才能のうちかも?」

「……ただの失敗だ」シオンが淡々と突っ込む。


 そんなやり取りに、真凜は思わず笑った。

 この学園での毎日が、どんな未来につながっていくのか。

 不安はあるけれど、仲間と一緒ならきっと大丈夫。


 そう思えた瞬間だった。

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