12話:模擬戦


 俺の実力をラウルとサラに認めさせるためにローズに模擬戦に誘われた。


「ローズ、解ったよ。2人を納得させられるだけの実力が俺にあるか解らないけど、模擬戦をするのは構わない」


 俺としても自分の力を試すのに良い機会だから誘いに乗ることにした。


「じゃあエイジ、早速始めるわよ。冒険者ギルドの訓練場を借りて来るわ」


 ローズは受付に行くとギルド職員に理由を言って、地下にある訓練場を借りる。ちょうど俺を冒険者に合格させたグレッグが居合わせて、面白そうだと一緒に訓練場について来る。


「グレッグさんはエイジと知り合いなの?」


「まあ、一応な……ローズ、模擬戦だからってあまり気を抜くな。油断したら、おまえでも痛い目に合うかも知れないぞ」


「へー……グレッグさんがエイジの実力を認めているんだ。じゃあ、私の目に狂いはなかったってことね!」


 サラとラウルも一緒に来て、壁際で俺たちの様子を眺めている。


「エイジ。木剣で戦っても本当の実力は解らないわ。普段から使っている武器を使いなさいよ」


 ローズはベルトに差した鞘から剣を抜く。ローズの武器は片手でも両手でも使えるバスタードソード。鎧はハーフプレートで、左腕に小型の盾を括りつけている。若手トップクラスの実力者だけあって、装備は全部マジックアイテムだ。


 俺も自分の剣を抜く。俺の装備は2階層までの魔物のドロップアイテムだから、普通に店に売っている安物だ。


「エイジが怪我をしても、私は聖騎士パラディンだから傷を治してあげるわ」


 聖騎士は戦士ウォリアー司祭プリーストを複合したような上級クラスで、戦士系クラスなのに第7階梯までの司祭魔法が使える。ちなみに上級クラスは他のクラスよりもステータスの伸びが良いけど、レベルアップに必要な経験値が多い。


「じゃあ、遠慮なく行かせて貰うよ」


 ローズはラウルとサラを納得させたいみたいだけど、俺は自分にできることをやるだけだ。最初から全力で仕掛ける。


「……速い!」


 ローズは一瞬驚くけど、直ぐに落ち着いて剣を構える。勿論、俺はステータス任せで戦うつもりはない。ステータスを活かした戦い方をしないとローズには通用しないだろう。


 床を蹴って素早く左右に跳ぶことで、的を縛らせないように不規則な動きをする。

ローズの間合いに入る直前、軸足をコマのように回転する要領で向きを変えて、横を擦り抜けるようにして足元を狙う。


 ローズは反応して剣で受けると、続けざまに反撃の一撃を入れる。俺は地面を蹴って思いきり跳び退いて躱す。


「私の攻撃を躱すなんて……エイジ、やるじゃない!」


 ローズは楽しそうに笑いながら俺との距離を詰める。ローズの素早い斬撃を、間合いを測ってギリギリで躱す。距離を空け過ぎると反撃できないからな。


 エイジ・マグナスだった頃の俺はステータスが低かったから、格上相手と渡り合う方法を必死に模索した。位置取りと仕掛けるタイミング。相手の間合いを外して自分の間合いに入れる。


 ダメージを受けることは覚悟の上で、捨て身のような戦い方だった。だけどおかげで自分よりも強い相手に勝てるようになった。


 メイと組み手をするようになってからも、俺は格上を倒す方法をずっと模索している。ステータスに頼るような戦い方をしたことはない。


 ローズの剣を躱した瞬間、距離を取るんじゃなくて逆に詰める。至近距離でも今の俺なら剣を上手く操れる。


 安物の剣だから性能は期待できないけど、肘を後ろに引いて腰だめにした剣が真面まともに命中――HPを削る感触。よし、ローズにダメージを与えた!


「嘘……私が攻撃を喰らうなんて! ホント……エイジ、やるじゃない。まさかこれほどとはね。ここからは私も本気で行くわよ!」


 ローズが加速して楽しそうに剣を振る。聖騎士の固有能力オリジナルアートを使えば俺にダメージを与えるのは難しくないだろう。だけどローズは通常の戦闘コンバットスキルだけで戦っている。


 ローズはフェイントや先読みも上手いから、本気になるとさすがに全部は躱せない。俺は反応速度と間合いの取り方で最小限のダメージに留める。


「もう十分なんじゃねえか……ローズの攻撃が真面に当たってねえ。あいつは何者だよ? ステータスが高いのもあるが、戦い方も素人じゃねえぜ」


「そうね……これだけの実力があるなら、むしろ私たちとパーティーを組むべきだわ。ソロで戦うには限界があるから……ソロに拘るのは、もしかしてまだ隠し玉があるってこと?」


 ラウルとサラが何か話しているけど、今は戦いに集中する。ローズに俺の実力が通用していることが素直に嬉しかった。


 ローズと戦うことは楽しい。ローズは俺の動きを読んで攻撃する。メイと手合わせをしていなかったらローズの剣の餌食になっていただろう。


 不意にローズが距離を置いて動きを止める。


「エイジ、楽しかったわ! ねえ、ラウルとサラもエイジの実力に文句はないわね?」


「そんなレベルじゃねえだろう。俺が本気で戦ってもエイジを倒せるか解らねえぜ」


「彼の実力は認めるけど、ソロで戦うメリットがあるかは疑問だわ。私たちだってソロでダンジョンに挑むなら、せいぜい6階層ってところじゃない? パーティーを組んでもっと深い階層に挑んだ方が効率的だわ」


 サラはまだ納得していないみたいだな。ローズが回復魔法を発動して、俺と自分のHPを回復させる。


「まさか新人がローズと互角に戦うとは……」


 冒険者ギルド職員のグレッグが唖然としている。そう言えばグレッグも一緒にいたんだったな。

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