紅のロンリネス
猫柳蝉丸
本編
時に西暦2030年!
一人の戦士は懐かしき仲間にさいたまスーパーアリーナに呼び出され、遂に宿命の再開を果たすのだった!
「久しぶりだな、今まで何をやっていたんだ?」
「何を……だと? おまえらが勝手に追放しておいて、ずいぶんな言いぐさじゃないか」
「おまえも分かっているだろう……。事情があった……事情が!」
「事情があったのは分かっているさ。だが追放された身にとっては何の言い訳にもならないのも分かっているだろう」
「この二十四年、おまえのことを気に掛けない日はなかった。本当だ。できればサポートメンバーとして残ってほしかった。これは本当だ」
「サポートメンバーだと……? そんなの納得できるはずがないだろう。俺たちは同格だったんだ、そうだろう? いやむしろ追放されるまで俺の方が特別視されていたと言っていいはずだ」
「しかし134340……」
「俺をその名で呼ぶな! おまえたちはいつもそうだ! 人から名前を奪い、番号だけを与え管理したつもりになる……!」
「そうは言っても、力を喪ったおまえをメンバーに入れておくわけにはいかないのも分かっていたことだろう?」
「俺は力を喪ってなどいない! 確かに全盛期より落ちはしたが、それでも知名度ではおまえらには負けていないつもりだ!」
「134340……、夢の無いことを言いたくないんだが、最近の子供たちはおまえのことなんてほとんど知らないんだ。二十年以上経っているんだ。どうしようもないだろう?」
「そんなことはない! 思春期の中学生や小説家になろうの読者なんかは俺のことが大好きなはずだ!」
「それは……まあ……そんな気がしないでもないが……」
「そうだろう! だからこそ、今こそ追放されたこの俺が返り咲く時なんだ!」
「どうするつもりだ134340……、いや、昔の名前で呼ぼう。惑星戦隊トゥインクルスタージャー、メイオウセイクリムゾン!」
「二十年以上ぶりにその名で呼んだなカセイオレンジ……。火星なんてメジャーな惑星の力を得たおまえに俺の苦しみは分かるまい。突然太陽系惑星から外されて冥王星の力を奪われた俺の苦しみが!」
「いや、仕方ないだろう、上がそう決めてしまったんだから」
「上なんて知るか! 冥王星が太陽系の惑星から外されたからって、俺を惑星戦隊から追放しなくてもいいだろうが!」
「事情があった……事情が! 具体的には紛らわしくなるから外してくれってスポンサーから言われた! 複雑なんだよ、金出してくれるスポンサーも!」
「大人の事情なんて知るか! だから俺はこの二十四年、新しいスポンサーを探して悪と戦ってたんだよ!」
「マジかよ! おまえアラフィフだぞ!」
「大手企業で戦隊やってるおまえには俺の血の滲む活動は分かるまい。だがな、俺は遂に新たな仲間とスポンサーを見つけたんだよ」
「なん……だと……?」
「無知なカセイオレンジは知るまい。太陽系には冥王星より遠くにも外周惑星が存在していることを。俺はその惑星の力を司る新たな仲間を見つけたんだよ」
「えっマジで?」
「そうだ! 魔王星、智王星、神無月星、雷王星……、冥王星の先にはその四星が存在している! 俺はその四人と新たなダークネススタージャーを結成したんだ!」
「太陽系の先のことは知らんけどおまえたぶん騙されてるぞ! 何だよ他はともかく神無月星って!」
「騙されてるんじゃない! 騙されたいんだ!」
「騙されてんなよ! おまえもうアラフィフなんだぞ!」
「アラフィフアラフィフ言うな! うおおおおおっ往くぞおっ、ダークネススターアクセス・メイオウセイクリムゾン! 勝負だカセイオレンジッ!」
「ならば来い! 大企業の力を見せてやる! トゥインクルスター・アクセス・カセイオレンジ! 往くぞおおおおおおっ!」
俺たちの戦いはこれからだ!
紅のロンリネス 猫柳蝉丸 @necosemimaru
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