動物が人間の姿に…

「なんでいつもこうなるのか」


オレの周りには狐と狼とハイエナがいる。見ている人はいないと思うが、もし居たとしたら本当に奇妙に映ることは間違いない。だってオレがこんな風なところを目撃したら間違いなく『変』だと感じるだろうからな。



山奥に暮らしていると不便な事は勿論多くある。まず一番は食料の問題。さすがに自給自足が出来る訳でもない。自分で畑でも作れば何か違うかもしれないがそんな重労働なことを自分が出来るとは思えない。自分にそんな体力がないのは自分が一番分かっているつもり。



だから2週間ぐらいに1回ぐらいの頻度で山を降りる。そして普通であればオレ一人が山を降りるだけでいいはずだ。だけど狐や狼とハイエナの3匹がそれを受け入れてくれなかった。自分たちも行くと言って何も聞かない。正直、3匹の動物を連れて山を降りると変な人という目で見られそうだし、断りたかった。


だが、動物たちは譲る気が内容で今回はオレが折れることにした。




「ねぇ…家で待っていた方がいいと思うよ。それにオレも帰りはなるべく遅くならないようにするから。今からだったらまだ戻れるし」



だが、狐は納得していないようだった。


『いやだ。あたしは少しでも離れたくない』


それはハイエナも同じ気持ちらしく、それに同意する。


『うん。近くに居てくれないと…』


本当に当たり前のように話している。これが当たり前のように根付いているようで少し怖く感じてしまう。



「じゃあ、戻る気はないということか?」



『もちろん。俺はお前から離れる気がないからな』

狼も狐やハイエナと同じようで帰る気は全くないようだ



「それにあたしたちは色々と出来るから、お前に迷惑を掛けるようなことはない」


いや、色々って何って思ったけど…ここで聞いちゃいけない気がして聞けなかった。まず食料とかを売っているところに動物を連れていけないよな…常識的に。まあ、この子たちは幸い、オレの言葉を理解ができる。最悪、外で大人しく待っててと言えば待ってくれるかな…。


そんなことを考えながら…オレと狐と狼と猫と犬は山を下るのだった。




その時のオレはあんなことになるとは思いもしなかった。


―――――――――――――――



「やっと着いた」


かなり山奥に住んでいるだけあって…下るのにもかなりの時間が掛かってしまう。でも、狐、狼、ハイエナも全然疲れていなさそうだった。オレは正直下るだけでもかなりの体力を使って…かなり息が上がっているのに。



「さすがにこれから先に色々と視線を集めるのは避けられない」


ここからは街。

山奥とは違って人が多い。これから登山をしようとしている人たちや、観光に来ている人などそれぞれだろうが。



『じゃあ、そろそろ変わる』



『そうだな』


そんな話を始めたのが聞こえてきた。オレにはそれが何のことを指しているのか、まるで分からない。だが次の瞬間、嫌でも分からせられた。




『『『化け』』』




全員が言ったのと同時になんか急に光りだして目を開けているのが困難になった。そして次に目を開けた時には狐も狼もハイエナの姿もなかった。




それと引き換えに――――――


「あたしの体ってこんな感じだったけ」



「俺の体ってこんなに扱いずらかったか。最近は四本足で過ごすことが多かったからな」



「でも、これでぼくも一緒にいられる」



まるでオレのことが見えていないかのように……ケモ耳の生えた…3人の少女は話し始めた。本当にオレっておかしいのかな。動物が人間の言葉を話しているかのように聞こえて、今は急に3人の少女が姿を急に現す。後で本当に病院に行こうかな。



「あたし、変じゃない?」


白いケモ耳の少女がオレに問いかけてきた。



「…な、なにがどうなってるの?」



「ああ、これはあたしたちが使える特殊な力みたいなもの。あたしたちは少しの間ですけど人間の姿になることが出来る。でも、普段は人の姿になる必要がないし、あんたと会った時も獣の姿だったし、変に混乱させたくもないからこの姿にならなかったの。でも、今回は人間のような姿にならないとあんたに付いていけないから」


この人はまるで当たり前のように人間になる…という言葉を使っているが狐が人間になるなんてどうやって信じたらいいんだ。正直、驚きが強すぎて未だに信じられない。でも、一つだけ真実がある。それは動物が居なくなって少女が現れた。これだけは真実なのだ。



「さすがに俺たちの姿に混乱しているのか?」



「そうかも。ぼくたちの姿を見せたの初めてなのに」



「じゃあ――――――



あたしの頭を撫でて」


急にそんなことを目の前の白髪のような少女に言われた。さっきの白いケモ耳。もし、本当にあの4匹が人間の姿になっているのだとしたらこの少女は狐かな。


「撫でる?」



「うん、撫でて」


ここで拒否する理由がないので仕方なくオレは従うことにした。



「…きもちいい……やっぱりこれ…どう?いつもあんたはあたしのことを撫でてくれるから分かるんじゃないかと思ってやってみた」


撫でただけで誰か判断が出来るほど…オレはそんな敏感な人間じゃない。だから決して断言はできないものの…でも、どこかで撫でたことがあるような感じもするような…。



「…どうかな」



「わからないの。あたしはあんたにとってその程度なの。あたしはあんたにとっても感謝しているし、大好きなのに!」



そんなことを言われてもオレは……。


「……う、うん。わかるよ…」


こう言わないとまずい気がした。



「あんたはいつもの姿と今の姿だったらどっちがいいの?」



「あ、それは俺も気になる」



「ぼくも気になるかも」


なんでそんなことを気にするのか全く分からない。それに今のオレは当たり前のように動物が人間の姿になったことを受け入れている。そんな自分自身が少し怖いと感じてしまう。


「どちらがいいかと聞かれてもオレはどちらが良いとかはない」


世間で言えば美少女の類に入るような容姿の人たちだろう。ケモ耳とかがなければな。


「ぼくのこと姿、いや?」


「別にいやではない。今のお前も動物の姿も、どちらもお前だからな」


そんな返答をしながらもオレの脳は異常事態についていこうと必死に処理をしていた。元々テレパシーのようなもので会話が出来ていたわけだし、姿を変えられるような生物だったとしてもそこまで驚くようなことではないのかもしれない。


すると白いケモ耳を生やした狐であろう少女がオレの手を引っ張る。


「ほら…買い物するよ。あたしたちのこの姿はあんまり長い間、持たないしさ」


そして白いケモ耳の少女に手を引かれてオレたちは買い物に行くのであった。


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動物の声が聞こえてしまうオレはやっぱりおかしいのだろうか 普通 @jgdqa

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