第2話 夢見る少年は道を誤る
「サッカー選手に俺はなる!!」
元気に叫びながら隣を小学生達が追い抜いていく。
朝からよくそんなに元気が出るなと思いつつ、俺は眠たい目をこすった。
「なあ、デュエマのチャンピオンになるにはどうしたらいいと思う?」
隣を歩く能天気な男、康太が間の抜け顔して話しかけてきた。
「あー、エグゾディアを揃える?」
「制限カードやん!てかそれ遊戯王じゃね?!」
「だっけか?」
答えるのがめんどくさいので適当に相槌を打つ。
「じゃあ、ポケモンマスター」
「マスターボール増殖バグかな」
「不正じゃねぇか、じゃあ」
「何なんだよさっきから」
まだ続きそうなので無理やり話を終わらせる。
「いや、夢っていいなと思って。人生が楽しくなるというか、充実するというか。永生はなんかないの?」
「お前の夢デュエマとポケモンマスターかよ。」
康太の瞳の奥にキラキラするものを感じる。少し考えてみたが、なりたいものや情熱を捧げるようなものもは特に思いつかなかった。
生きることへの気力も特にない。別に死にたいわけではないのだが、今日死ぬなら死んでしまっても構わないとすら思っていた。
「毎日ゲームとアニメ三昧したい。」
「夢ないな〜。アニメといえば、最近異世界転生の話多いよな。みるたびに考えるよ、俺も飛ばされないかな〜って。そしたらデュエマ世界で最強になれるのに。」
「デュエマから離れろよ。転生するには死ななきゃだろ?死んでまで行きたくないって。俺は死んだら終わりでいいかな、生きる縛りから解放されて無になりたい。」
「いつからそんな無気力で捻くれた人間になっちまったんだよ〜、昔はもっとやる気とかに満ち溢れてたじゃないか。それに異世界には避けて通れない王道があるんだぜ?」
「王道?」
「そう、ハーレムさ!俺だけに与えられるチート能力で女の子たちを救っていく。で、その子達が俺のことを好きになってしまうのだ!憧れるよな〜、永生。」
このバカは何をいってるんだかと呆れ半分だったが少しだけ想像してみた。
魔獣に襲われてる白髪美少女、その牙が少女を襲う刹那俺が間一髪助け出し、あっという間に魔獣を討伐する。そして、その少女に好意を抱かれ…。
そんな想像に口元が緩む。悪くない。
「何ニヤついてんだよ、気持ち悪っ!」
「ニヤついてねーし!それにお前には言われたくない!」
交差点の信号待ちに差し掛かると、さっきの小学生達がサッカーボールを蹴り合っていた。
「見とけよ!俺のシュートはどんなゴールキーパーも止められない!スーパーバーニングシュート!」
掛け声と共にボールを力いっぱい蹴る。ボールは蹴った本人の斜め前に飛んでいき、横断歩道の上を転がっていった。
蹴った小学生がそのボールを追いかけた
———そして、何故か俺も身体が勝手に動いてしまった。
「おい、馬鹿!」
誰が発したか分からない声が響いた。
咄嗟に足が動き、小学生を追うために横断歩道へ飛び出した瞬間、強烈な衝撃が両足に走る。
ドシャーーーン!!
車の金属がぶつかる感触、タイヤの音、そして耳をつんざく悲鳴。
目の前の光景が一瞬歪み、身体が宙を舞う。
小学生も、俺も、同時に――時間が止まったかのように空中で浮かんだ。
「くっ……!」
叫ぼうとしても声が出ず、全身の感覚が飛んでいく。
まさか、こんなベタな展開で死ぬのか、死にたくないな。今までの人生が走馬灯のように頭の中を駆け巡った。
いや、悪くないかーーー。
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