第2話

新たな教え子の教育初日。自宅兼仕事場の象牙の塔の庭先にテーブルと椅子を用意した。青空教室だ。

「今日からあなたの魔法教育を努めることになるメイズ=ロッドです。まずはあなたのことを教えてください。」

「サイエンです。」そっけない態度を隠しもせずに名前だけ告げた。

「サイエンさん、魔法はどの程度使えるか伺っても?」

「…才能はあるらしいよ。…習っても使えなかったけど。」

「なるほど、こちらに来た理由はそれですね。」

「本当に魔法使いになれるの?」

「魔力適性があるならなれます。私の理論が正しければ、ですが。」俺がそう言うとサイエンは胡散臭いと言わんばかりの顔でこちらを見る。

「時間が限られているのでまず詠唱魔法が何かから教えましょう。」



魔法を使うとは想像したものに魔力を流し、現実に反映する。というのが世界的な常識である。サイエンもその常識に基づいた教育は受けていたらしい。

「私は詠唱とは魔法を使う上で魔力を形にするためのきっかけになると思ってます。あなたも想像して魔力をこねくり回したのでしょうがそれが上手くいかなかった。違いますか?」

「はい。」話があまり頭に入ってないって顔をしてる。

「想像なんてあやふやなものだとできる人、できない人がでてくるのは当然です。詠唱はできない人が魔法を使うための力になる。まずはそれを体感してください。」



「使えるようになりたい魔法ってありますか?」

「水か火を使えるようになりたいです。」

「わかりました。」一度深呼吸して魔力を目の間に集める。

「ありふれた水よ指先に集え【水球生成アクアボール】」指先に拳大の水の球が現れる。

「今まで見た水をイメージしながらそれが指先に現れるように魔力を集中させてください。」実際に見せてからとりあえずやらせてみる。

「イメージしながらさっきの詠唱を言えば魔法になりますか?」

「はい、今まで教えてきた人はこれで使えるようになりました。」今まで使えなかったから半信半疑なのだろう。サイエンは戸惑いを隠せないながら魔力操作と詠唱を始める

「…ありふれた水よ指先に集え【水球生成アクアボール】」球とはやや言い難いが指先に水が浮いている。

「!で、できた!本当に魔法って使えるんだ!」まだ7歳の少年らしいはしゃぎっぷりだ。よっぽど嬉しかったのだろう。

「いっけぇ!」指先に集まった水を飛ばそうとしたのだろう。しかし水は真下に落ちる。

「前に飛ばすならまた別の魔法が必要です。今はそのイメージも詠唱もしてないので真下に落ちました。」悲しい現実だがそこはしっかり教えておかないとな。感情が希望からの落胆へ変わり、サイエンはまた無表情になる。

「あなたの反応を見ればわかります。とにかく魔法が使えるのはわかったでしょう?規模が小さくて詠唱が短いものを今日はやっていきましょう。」

「よろしくおねがいします。」乗り気になったな。俺は確信した。

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