詠唱魔法を諦めない

田奈涼

第1話

「魔法はその想像力の限り自由だ。魔力を感じてその魔力で想像を実現すれば何でもできる。」師匠が何度も俺に言った言葉だ。


「言葉をいちいち言うよりパッと想像してチャッと形にすりゃそれでいいだろ。」友人はそう言って笑っていた。


それでも俺は詠唱の可能性を捨てることはしなかった。





「あなたが詠唱魔法研究者のメイズ=ロッドさんですか?」

「はい。本日はどのような御用件でしょうか?」

辺鄙な土地に建てた自称【象牙の塔】にはたまに客人が来る。あえて要件を聞くがその要件は決まっている。

「息子の魔法教育を頼みたい。まだ7歳だが魔力への適性はある。」

「なるほど。今いくつかの教育案件を抱えてまして、こちらに来てもらうか否かで条件がかなり変わりますがそちらはよろしいですか?」

「送迎兼護衛の転移魔法使いの同席を認めてもらえれば通いでいい。」

「では細かい時間、頻度の話をしましょう――――――」新しい生徒が1人増えることになるな。俺は内心でガッツポーズをとった。


俺は詠唱魔法の可能性を信じる。だから魔法使いを育てるのだ。無詠唱が当たり前のこの世界で、想像なんてあやふやなものではない、確かな理論と体系に基づいた魔法。詠唱魔法を世に広めるために。

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