第四章:神の宿命と人の決意

亮介と千歳が心を通わせるようになったある日、大地が再び大きく揺れた。避難所はパニックに陥ったが、千歳は人々を落ち着かせると、一人、体育館の外へと向かった。心配になった亮介が後を追うと、彼女は地面に手を当て、何かを祈るように目を閉じていた。彼女の体から淡い光が放たれ、周囲の地面の亀裂がゆっくりと塞がっていくように見えた。しかし、それと同時に、彼女の顔色は青ざめ、その場に崩れ落ちそうになる。


「千歳!」。亮介が駆け寄り、彼女の体を支える。彼女は弱々しく微笑み、ついにその秘密を打ち明けた。自分はこの土地に古くから宿る神の化身であること。人々の信仰が薄れ、力は弱まっていたが、この大災害で苦しむ人々を救うため、残された力のすべてを使って顕現したこと。そして、この土地の怒り(災害)を完全に鎮めるには、自らが「人柱」となり、大地に還らなければならない運命にあることを。


「それが、私の役割だから」。淡々と語る彼女に、亮介は叫んだ。「そんな役割、あってたまるか!君は物じゃない、ただの役割でもない!」。彼は建築家だ。役割や機能だけで構成された無機質な箱を嫌というほど作ってきた。だが、千歳は違う。温もりがあり、心がある。亮介は固く決意した。建築家として、一人の男として、この不条理な「設計図」を書き換えてみせる。神の宿命に、人間の意志で抗うのだと。

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